重仁親王

重仁親王：運命に翻弄された皇族の生涯

重仁親王は、平安時代後期を代表する悲劇的な皇族の一人です。崇徳天皇の第一皇子として、保延6年（1140年）に誕生しました。母は源行宗の養女で、兵衛佐局と呼ばれた女性でした。幼少期から、重仁親王の運命は激動の時代と深く結びついていました。

父である崇徳天皇は、鳥羽上皇の強い意向により、異母弟の体仁親王（後の近衛天皇）を皇太弟に立てられました。そのため、生まれたばかりの重仁親王は、近衛天皇の生母である美福門院の養子となりました。さらに、平忠盛の継室である藤原宗子（池禅尼）を乳母として迎え、恵まれた環境で育ちました。永治元年（1142年）には親王宣下を受け、天養元年（1144年）には着袴、久安6年（1150年）には元服して三品に叙せられました。美福門院は重仁親王を溺愛し、将来の皇太子候補として最も近い存在として扱っていたと言われています。

しかし、近衛天皇が崩御した久寿2年（1155年）、重仁親王の運命は大きく変わります。父である崇徳上皇は、重仁親王の即位を強く望みました。しかし、崇徳上皇が藤原頼長と結んで近衛天皇を呪い殺したという噂が宮廷を駆け巡り、鳥羽法皇の怒りを買います。その結果、皇位は崇徳上皇の弟である雅仁親王（後[[白河天皇]]）が継承することになりました。

この出来事が、後に保元の乱を引き起こす大きな要因の一つとなります。『兵範記』は、崇徳上皇が強い恨みを抱いたことを乱の原因として記していますが、近年では、権力基盤が脆弱だった後[[白河天皇]]側が、崇徳上皇と頼長を挑発したという説も有力視されています。崇徳上皇の行動が計画的ではなかったという証拠として、白河北殿に立て籠もった際、重仁親王を連れて行かなかった点が挙げられます。

保元の乱においては、重仁親王の乳母であった池禅尼が、継子である平清盛の後[[白河天皇]]への加担を支持しました。『愚管抄』にもそのことが記されています。そのため、平氏一族の大部分が後[[白河天皇]]に与することとなり、両陣営の兵力差は決定的なものとなりました。

乱の後、崇徳上皇は讃岐国に流され、重仁親王は仁和寺で出家しました。寛暁大僧正のもとで仏道に励んだものの、応保2年（1162年）1月28日、足の病により23歳の若さで亡くなりました。父母に先立ち、短い生涯を終えたのです。

興味深いことに、重仁親王は出家後、父母のいる讃岐へ行き、亡くなるまで崇徳上皇と母の近くで暮らしたという伝説が残っています。香川県高松市檀紙町にある檀紙八幡神社には、「重仁親王廟」が存在し、その伝説の名残を今に伝えています。重仁親王の生涯は、平安時代後期の激動の時代を象徴するものであり、皇位継承争いの悲劇と、権力闘争の影を強く感じさせるものです。

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