重厚長大

重厚長大（じゅうこうちょうだい）とは

重厚長大とは、主に重化学工業などの産業を指す経済用語です。具体的には、鉄鋼業、セメント、非鉄金属、造船、化学工業といった、重く・厚く・長く・大きな製品を扱う産業を意味します。これらの産業は、高度経済成長期における日本の経済発展を支える重要な役割を果たしました。

重厚長大から軽薄短小へ

しかし、時代とともに消費者のニーズは変化し、製品の小型化、軽量化、多機能化が求められるようになりました。その結果、産業構造は重厚長大から軽薄短小へと移行していきます。

軽薄短小とは、小型で軽量、短いサイクルでモデルチェンジが行われる製品を扱う産業を指します。エレクトロニクス産業やIT産業などが代表例です。重厚長大が「古い」「過去のもの」といったネガティブなイメージを持たれることもあります。

背景

重厚長大という言葉が生まれたのは、石油危機後の高度経済成長の終焉期です。1980年代頃から産業構造のソフト化・サービス化が進み、重厚長大産業は衰退の一途を辿ると考えられました。そして、エレクトロニクスやソフトウェアなどの軽薄短小産業へのシフトが求められるようになったのです。

「トンの経済からグラムの経済へ」という言葉が、当時の変化を象徴しています。日経ビジネスが1982年に『軽・薄・短・小化の衝撃』という特集記事を掲載し、大きな話題となりました。

現在の重厚長大産業

しかし、重厚長大産業が完全に衰退したわけではありません。鉄鋼業などの素材産業は、高付加価値製品に軸足を移し、中国を中心としたアジア各国の経済発展に伴い、アジア諸国への輸出を増やしました。その結果、2000年代中頃の景気回復の原動力の一つとなったのです。

大衆文化への影響

1980年代前半の日本の大衆文化においても、「軽薄短小」は世相を映す言葉として使用されました。作家の椎名誠、嵐山光三郎らのエッセイ集は、話し言葉を主体とした昭和軽薄体とよばれるスタイルで人気を博しました。フジテレビは「楽しくなければテレビじゃない」をスローガンに掲げ、軽チャー路線を打ち出しました。

まとめ

重厚長大は、かつて日本の経済成長を支えた重要な産業構造です。軽薄短小へのシフトが進んだものの、高付加価値化やアジア経済の発展により、現在でも重要な役割を果たしています。時代の変化に対応しながら、重厚長大産業は新たな道を歩んでいます。

関連項目

工業化
オールドエコノミー
* 産業構造、産業構造の転換

もう一度検索