金メダル (王立地理学会)

王立地理学会金メダル：地理学における栄誉の証

英国王立地理学会（Royal Geographical Society, RGS）が授与する金メダルは、地理学分野における最高峰の栄誉の一つとして広く知られています。1830年の創設以来、地理科学の発展と地理的発見に多大な貢献をした人物に贈られるこの賞は、その権威と歴史から、地理学者にとって究極の目標と言えるでしょう。

金メダルには、創立者メダル (Founder's Medal) とパトロンズ・メダル (Patron's Medal) の二種類が存在します。創立者メダルは1830年、パトロンズ・メダルは1838年に創設されました。両メダルは同等の価値を持つとされ、それぞれに異なる歴史と象徴的な意味合いを持っています。

この賞の起源は、1831年に当時の国王ウィリアム4世が「地理的科学及び発見の奨励、推進のための奨励金」として毎年50ギニーを下賜したことに遡ります。当初は賞金が授与されていましたが、1836年から1838年にかけては金メダルが、そして1839年からは創立者メダルとパトロンズ・メダルが授与されるようになりました。創立者メダルの表面にはウィリアム4世、パトロンズ・メダルの表面には、1837年に即位したヴィクトリア女王の肖像が刻まれています。これらの肖像は、英国王室の後援と、地理学研究への王室の関与を象徴しています。

受賞者の選考は厳格であり、地理学界における卓越した業績が求められます。国王の承認を得た上で、学会の選考委員会によって決定されます。これは、この賞の権威と重要性を示すものです。

これまで、数多くの著名な地理学者、探検家、科学者らが金メダルを受賞しています。デイヴィッド・リヴィングストン（1855年受賞）、アルフレッド・ラッセル・ウォレス（1892年受賞）といった、アフリカ探検で名を馳せた人物もその中に含まれています。他にも、地図作成、測量、海洋学、地質学、人類学など、地理学の様々な分野に貢献した人々が受賞しており、地理学の進歩の歴史を如実に物語っています。

以下に、過去の受賞者の一部とその業績をリストします。このリストは、王立地理学会の公式記録に基づいて作成されています。初期の受賞者には、50ギニーの賞金が贈られていましたが、それ以降は金メダルが贈られています。例外的に、高精度携帯時計であるクロノメーターが授与された例もあります。

1830年代
1832年：リチャード・ランダー（Richard Lander）- 西アフリカ探検
1833年：ジョン・ビスコー（John Biscoe）- 南極海探検
1834年：サー・ジョン・ロス大佐（Captain Sir John Ross）- 北極圏探検
1835年：サー・アレクサンダー・バーンズ（Sir Alexander Burnes）- ペルシア探検
1836年：サー・ジョージ・バック（Sir George Back）- グレート・フィッシュ川探検
1837年：ロバート・フィッツロイ大佐（Captain Robert Fitzroy）- 南アメリカ沿岸測量調査
1838年：フランシス・ロードン・チェスニー大佐（Francis Rawdon Chesney）- シリア、メソポタミア探検
1839年：創立者メダル：トマス・シンプソン（Thomas Simpson）- 北アメリカ大陸探検、パトロンズ・メダル：エドゥアルト・リュッペル博士（Dr. Edward Rüppell）- ヌビア、アラビア探検（外国人初の受賞者）

(以降、1840年代から2023年までの受賞者リストは省略)

金メダルは、単なる賞ではなく、地理学への貢献を称えるとともに、未来の研究者や探検家へのインスピレーションの源となっています。その歴史と伝統は、地理学界において揺るぎない地位を確立しており、これからも地理学の発展に貢献する人々への最高の栄誉として輝き続けることでしょう。

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