金唐革紙

金唐革紙について

金唐革紙（きんからかわし、英語: Japanese leather paper）は、日本の伝統工芸品の一つであり、高級な壁装材として広く認識されています。この紙は、金属箔（例えば金箔、銀箔、錫箔など）を貼り付けた和紙に特殊な凹凸文様を施し、彩色を加えた作品として製作されます。すべての工程が手作業で行われるため、長い時間と技術が求められます。

歴史的背景

金唐革紙の起源は、欧米の皮革工芸品である「金唐革」にまで遡ります。この工芸品は宮殿や公共建物の室内装飾に用いられ、唐草や花鳥の模様が特徴的でした。17世紀半ばには、オランダでスペインの金唐革が輸入され、日本でもその美しさが注目を集めました。しかし、鎖国政策により入手は困難だったため、代用品として和紙を使用した金唐革紙が生み出されました。これが1684年（天和4年）に伊勢国で初めて完成され、金唐革紙として知られるようになりました。

明治時代に入ると、国立印刷局の前身である紙幣寮がこの紙の製造と輸出に関与し、ウィーン万国博覧会やパリ万国博覧会にも出品されるなど、国際的にも評価を得ました。また、バッキンガム宮殿をはじめ、国内の明治期の洋風建築においても多数使用されました。しかし、時間とともにその技術は徐々に忘れられ、昭和中期には完全に途絶えました。

近代の復活

1985年、旧日本郵船小樽支店の復元をきっかけに、金唐革紙研究所が設立され、現代版金唐革紙の復元制作が行われました。一時的には技術者が不足し、品質や製造量は不十分でしたが、代表の上田尚が中心となり、数々の復元プロジェクトを推進しました。

彼は、移情閣や旧岩崎家住宅などの重要文化財に金唐革紙を貼るプロジェクトを成功させ、その間に展示会の開催等で広く普及を図りました。上田は2005年に文部科学大臣から選定保存技術の保持者に認定されています。

金唐革紙の製造工程

金唐革紙の製作にはいくつかの工程があります。まず、手すきの楮紙と三椏紙を組み合わせて原紙を作ります。次に、金・銀・錫などの金属箔を原紙に押し付けます。続いて、文様が彫られた版木に湿らせた原紙を当て、刷毛で凹凸文様を彫り出します。特に、錫箔の場合は天然ワニスを塗布し、金色を表現します。さらに、漆や油絵具を使用して丁寧に彩色が施されます。

この製作プロセスは非常に難易度が高く、長年の経験が必要です。現在では、一人の職人が全ての工程を行うため、高度な技術と長時間の作業が求められています。過去の版木を利用することが多い一方で、新たなデザインに基づいた版木作りも行われることがあります。

現存する建築物

金唐革紙が使われている現存建築物には、旧岩崎邸庭園や入船山記念館、移情閣などがあります。これらの建物は、金唐革紙の美しさと文化的価値を今日に伝えており、重要文化財として保護されています。

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