金城夏子

金城夏子：沖縄密貿易の女王、その生涯と功績

金城夏子（きんじょう なつこ、1916年（戸籍上は1915年6月20日） - 1954年8月8日）は、沖縄県出身の実業家です。戦後の混乱期、米軍軍政下における密貿易で巨万の富を築き、「沖縄密貿易の女王」と称されました。

激動の時代を生き抜いた少女時代

沖縄戦で戸籍が消失したため、正確な出生年は不明ですが、現存する戸籍では1915年6月20日となっています。親族の話や本人の証言から1916年生まれとも言われています。漁業を営む家庭に生まれ、幼くして母を亡くしました。小学校卒業後、一時徳之島に残りますが、兄姉を頼ってフィリピン・マニラへ渡りました。

18歳で石垣島出身の金城常次郎と結婚。マニラで魚の販売業を営み、糸満出身の女性たちをまとめていました。また、株式売買で資金を蓄えたり、日本がアメリカとの戦争に負けることを予見するなど、鋭い商才を発揮していました。その後石垣島へ移住し、1944年には台湾へ渡りました。

戦後の密貿易で頭角を現す

終戦後、石垣島に戻った夏子は、18トンの船を購入し「開幸丸1号」と名付け、海人草の採取から事業を始めました。台湾の東沙諸島で採取した海人草を本土で販売し、莫大な利益を得ますが、違法操業のため国府軍から銃撃を受けました。その後、高速船「開幸丸2号」を新造し、密貿易を本格化させます。

1948年には石垣島と糸満に家を新築。精米所も開設し、事業を拡大しました。1951年に逮捕されますが、裁判で無罪となり、直ちに「幸陽商事」を設立。浦原一郎を社長に据え、沖縄での小麦の扱い高でトップの座を獲得しました。

密貿易では、沖縄から薬きょうや銅線などを香港へ運び、食料品や日用雑貨、医薬品などと交換していました。1950年に政府管理貿易が再開されると、密貿易は衰退していきました。

晩年と死

1953年、夏子は東京大学医学部附属病院に入院。頭部に癌が見つかり、沖縄へ帰った直後の1954年8月8日に亡くなりました。

沖縄経済への貢献と評価

金城夏子は、米軍軍政下の沖縄において、生活必需品の不足を解消するために密貿易を行い、沖縄経済の発展に大きく貢献しました。その一方で、密貿易は違法行為であり、彼女の功績に対する評価は分かれています。

しかし、彼女の傑出した商才と行動力は、多くの人々に感銘を与え、「沖縄密貿易の女王」としてその名を歴史に刻みました。彼女は、周囲を惹きつけ、統率するカリスマ性を持ち合わせており、その存在感は圧倒的だったと伝えられています。

家族・関係者

夫：金城常次郎 - 石垣島出身の漁師。1945年8月、軍属としてフィリピンで戦死。
長女：幸子
二女：愛子
瀬長亀次郎 - 沖縄人民党党首。金城夏子は瀬長亀次郎を支援した。

参考文献

奥野修司『ナツコ 沖縄密貿易の女王』 2005年 文藝春秋 ISBN 978-4-16-366920-5
『沖縄大百科事典 上・中・下』 1983年 沖縄タイムス社
* 鎌倉英也、宮本康弘、『クロスロード・オキナワ　世界から見た沖縄・沖縄から見た世界』　2013年　NHK出版

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