金沢地区製鉄遺跡群

金沢地区製鉄遺跡群の概要

金沢地区製鉄遺跡群（かねざわちくせいてついせきぐん）は、福島県南相馬市原町区金沢に広がる大規模な古代製鉄に関連する遺跡群です。この遺跡群は、歴史的な製鉄活動を理解する上で重要な痕跡を残しています。

立地と周辺環境

金沢地区製鉄遺跡群は、南相馬市原町区の北東部に位置し、近隣には鹿島区があります。この区域は古代陸奥国行方郡の管轄にあったとされ、『和名抄』に記載されている郷の一つ「真吹郷」にも該当すると考えられています。遺跡付近には、行方郡の郡衙所在地と推定される泉官衙遺跡と、金銅製双魚佩や馬具が出土された真野古墳群があり、考古学的にも見どころが多い地域です。

また、近くの烏崎海岸には砂鉄を豊富に含む砂浜が広がっており、ここから集められた砂鉄が製鉄に使用されたと考えられています。この地域の他の例として、新地町の武井地区製鉄遺跡群もあり、金沢地区と同時期における大規模な製鉄遺跡群の一つです。

発掘調査とその成果

金沢地区製鉄遺跡群は、1990年代前半に東北電力原町火力発電所の建設工事に先立って大規模な発掘調査が行われました。この調査によって、計11の遺跡が発見され、調査面積は22万4960平方メートルに達しました。具体的な遺構としては、152基の木炭窯、606基の土坑、123基の製鉄炉、20基の鍛冶炉、139棟の竪穴建物跡、30棟の掘立柱建物跡、14基の墳墓、そして1基の須恵器窯が見つかっています。

特に、出土した鉄滓の総量は約626トンにのぼり、この数量は当時の製鉄活動の規模を物語っています。さらに、炭窯の年代は7世紀中葉から10世紀の前葉であるとされ、この地域での製鉄の盛況な時代を示しています。

文化的意義

金沢地区製鉄遺跡群は、古代の製鉄技術や関連する生活様式を知る手がかりとなる貴重な文化遺産です。製鉄活動は当時の経済や技術の発展に寄与し、その影響は文化全体に波及していました。このような遺跡の存在は、地域の歴史や文化を学ぶ上でも重要な役割を果たしています。

参考文献

財団法人福島県文化センター（1995年）『原町火力発電所関連遺跡調査報告5』福島県文化財調査報告書310
飯村均（2005年）『律令国家の対蝦夷政策・相馬の製鉄遺跡群』新泉社〈シリーズ「遺跡を学ぶ」021〉、ISBN 4-7877-0631-4
福島県文化財センター白河館まほろん（2020年）『令和元年度まほろん企画展 ふくしま鉄ものがたり～鉄滓の山から読みとく歴史～』解説資料
福島県文化財センター白河館まほろん（2020年）『令和2年度企画展「ふくしま鉄ものがたり」関連行事 シンポジウム「鉄の道をたどる」予稿集』

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