金津三国線

金津三国線：芦原温泉への短い航跡

金津三国線は、かつて福井県北部を走っていた国鉄バス路線です。1972年3月1日、赤字路線の整理で廃止された国鉄三国線の代替として運行を開始しました。北陸本線金津駅（現在の芦原温泉駅）と芦原駅（現在のえちぜん鉄道あわら湯のまち駅）を結び、全長約4.7kmという短い路線でした。

他の国鉄バス路線とは独立しており、大野自動車営業所の管轄下に置かれ、同営業所から乗務員と車両が配置されていました。三国線の廃止に伴い、金津駅は特急停車駅として整備され、芦原温泉駅へと改称されました。金津三国線は、芦原温泉の温泉街への最短ルートとして、多くの行楽客を運びました。

運行開始当初から、金津三国線は短いながらも重要な役割を担っていました。芦原温泉へのアクセスは、観光客にとって非常に重要であり、金津三国線はその需要に応えるべく、多くの便数を運行していました。資料によると、1984年時点では1日25往復もの運行本数を誇っていました。運行時間はわずか約10分と短く、効率的な運行システムが構築されていたことが伺えます。

車両に関しても、路線の特性を反映した運行形態がとられていました。1980年代には、前中扉の5型大型車が使用され、前乗り中降り方式で運行されていました。これは、短い運行時間の中で乗客の乗降をスムーズに行うための工夫と言えるでしょう。また、両終点駅とも有人駅であったため、乗客は安心して利用することができました。

しかし、国鉄分割民営化を機に、金津三国線は1987年1月31日に廃止されることとなりました。小規模な路線であったこと、他の路線と共に廃止対象となったことが廃止の理由です。廃止後は、京福電気鉄道が路線を引き継ぎ、現在も「金津・東尋坊線」として運行されています。芦原湯町駅は京福電気鉄道三国芦原線の駅と合築され、改築された駅舎は現在も利用されています。

金津三国線は、わずか15年の歴史の中で、芦原温泉へのアクセスを担う重要な役割を果たしました。短い路線ながら、その存在は、地域の交通事情に大きな影響を与えていたと言えるでしょう。また、国鉄バスの縮小という歴史的背景の一端を示す、貴重な存在でもありました。現在では、京福電気鉄道の路線として受け継がれ、その歴史の一部は、地域の人々の記憶に刻まれています。 金津三国線の歴史は、国鉄バスの変遷、地方交通のあり方、そして地方都市の観光開発といった、様々な要素を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。 その短い歴史を振り返ることで、現代の交通事情を考える上で新たな視点が得られるかもしれません。

路線概要
路線区間: 芦原温泉駅 - 芦原湯町駅
運行期間: 1972年3月1日 - 1987年1月31日
運行会社: 日本国有鉄道（国鉄バス）
その後: 京福電気鉄道に引き継がれ、金津・東尋坊線として運行継続

参考文献
『バスジャパン・ハンドブック』 3 「西日本ジェイアールバス」（1995年6月）
『鉄道ジャーナル』1984年6月号（No.208） 特集記事「国鉄バス1984」
『鉄道ジャーナル』1987年5月号（No.246） 掲載記事「Bus Corner」
日本国有鉄道旅客局 『日本国有鉄道 停車場一覧 昭和60年6月1日現在』 日本交通公社出版事業局 1985年9月
読売新聞福井支局 『芦原温泉ものがたり』 旅行読売出版社 1973年10月
福井県文書館 経済振興と交通対策 - 『福井県史』 通史編6 近現代二

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