金無双

金無双：将棋における堅牢かつ柔軟な囲い

金無双は、主に振り飛車戦法、特に相振り飛車において用いられる将棋の囲いです。玉の左右に金が2枚並ぶ独特の形状から名付けられ、二枚金とも呼ばれます。その堅牢性と柔軟性から、現代将棋においても高い評価を得ています。

名称の由来と歴史

かつて振り飛車の玉囲いは総じて「右玉囲い」と呼ばれていましたが、大山康晴九段の提唱により「金無双」や「二枚金」という名称が定着しました。これは、玉の横に2枚の金が並ぶその形状に由来しています。

金無双の特徴と戦術

金無双は、先手の場合、玉を3八、左金を5八、右金を4八に配置します。この配置により、特に上部からの攻めに対して高い防御力を誇ります。しかし、側面からの攻めにはやや弱いため、右銀を2八に配置し、側面からの攻撃を防ぐのが一般的です。この右銀は「壁銀」とも呼ばれ、玉の逃げ道を限定してしまうという欠点もあります。

金無双と他の囲いの比較

金無双は、美濃囲いと比較して上部からの攻め（特に1・2筋）に強いという特徴があります。一方、側面からの攻めや4筋からの攻め（「うさぎ耳」と呼ばれる）には弱いため、戦法の選択が重要となります。

相振り飛車では上部からの攻めが主体となるため、金無双が有利とされてきました。しかし、平成期には矢倉囲いや穴熊囲いが主流となり、金無双の採用率は減少しました。これは、「壁銀」による玉の逃げ道の減少などが要因として挙げられます。

近年、令和期に入り、複雑な手順を要する矢倉囲いが敬遠される傾向にある中、金無双は再び注目を集めています。里見香奈女流四冠は、金の配置を調整した独自の金無双を用いるなど、新たな戦術が開発されています。

金無双は美濃囲いと比べて、銀を上げない形であれば1手早く組むことが可能です。そのため、急戦を仕掛ける際にも有効な囲いとなっています。また、矢倉囲いへの組み替えもスムーズに行えるという利点もあります。

対振り飛車急戦における金無双

現代将棋では、対抗型居飛車においても金無双を用いた急戦が定跡として確立されています。これは、7九の銀を上げない独自の形状で、勝又清和七段は「7九銀型金無双」と呼んでいます。

昭和から平成にかけては、相振り飛車以外での金無双の採用は少なかったですが、近年ではその有用性が再認識されています。急戦だけでなく、持久戦への移行も容易で、松尾流穴熊への発展も可能です。

対抗型振り飛車における金無双

大橋貴洸七段は、対抗型四間飛車において、特に穴熊囲い対策として金無双を用いた「耀龍四間飛車」を考案しました。これは端攻めを主体とする戦法で、現代将棋における金無双の多様な活用法を示しています。

まとめ

金無双は、その堅牢性と柔軟性から、現代将棋においても重要な囲いのひとつです。相振り飛車だけでなく、対抗型居飛車や対抗型振り飛車においても有効な戦術として用いられており、今後もその発展が期待されます。様々な戦法への対応力と、急戦・持久戦への対応力の高さは、金無双の大きな魅力となっています。将棋の戦術を深く理解する上で、金無双の特性を把握することは不可欠です。

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