金煥泰

金 煥泰の生涯と業績

金 煥泰（きん かんたい、1909年11月29日 - 1944年5月26日）は、朝鮮で活動した著名な文学評論家です。彼は文学を政治的な手段として利用することに強く反対し、それぞれの作品が持つ独自の芸術的価値を重視する立場を取っていました。生涯において文学批評に大きく貢献したものの、わずか35歳でこの世を去った運命の人です。

幼少期と教育

金煥泰は全羅北道茂朱面の内里に生まれました。彼の家族は中流階級であり、父親は役所に勤めていました。6歳から漢文を学び始め、7歳で茂朱普通学校に入学。1922年には全州高等普通学校に進学しますが、そこで日本人教師に対する抗議運動に参加し、退学処分を受ける結果となります。こうした経験が、彼の文士としての才能を育てる土壌となったのです。

その後上京し、普成高等普通学校に転校してからは、教師の金尚鎔や同級生の李箱と交流を深め、文学への情熱をさらに育てていきました。1927年には普成学校を卒業し、故郷に戻りますが、家計が傾く中で養鶏を試みたものの失敗に終わります。

日本留学と文学活動

1928年、金は日本に渡り、当初は東京で学ぶ予定でしたが、友人の影響で京都の同志社大学予科に入学しました。ここで彼は詩人の鄭芝溶と知り合い、彼の作品に感銘を受け、後に『鄭芝溶論』を著すことになります。大学2年生のとき、彼は下宿先の娘との関係が深まり、子供も授かりましたが、相手は病気で早逝してしまいます。

1931年に同志社大学予科を卒業し、その後九州帝国大学法文学部英文学科に進学。卒業論文ではマシュー・アーノルドやウォルター・ペイターの文学論を取り上げ、金の批評文学の基礎を築きました。1934年に九州帝大を卒業し帰国すると、すぐに執筆活動を開始し、様々な新聞や雑誌に評論や翻訳を寄稿しました。

文学活動と思想

当時、朝鮮の文壇はプロレタリア文学が主流を占めていましたが、金はそれに対して批判的な立場を取りました。彼は文学の担い手として、思想的な道具としての使用に対抗し、芸術そのものの価値について深く考察しました。この時期、彼は海外文学派の作家と交流し、九人会にも参加しながら、文壇での地位を築いていきました。

1936年には朴鳳子と結婚し、同年には長男の栄珍が誕生するなど、私生活でも充実した日々を送っていました。彼はその後も教師としての活動を続けつつ、さまざまな詩評や論文を雑誌や新聞に寄稿しました。

晩年と死

1940年代には日帝による言論弾圧が進む中、金は徐々に執筆を断念せざるを得ない状況に追い込まれます。公務員を目指して東京に向かう予定でしたが、肺炎の影響で帰国。この間、体調は悪化し続け、1943年には教師としての職を辞し、故郷で療養に努めるも、十分な医療が受けられないままでした。1944年5月26日、金煥泰はその生涯を閉じ、全羅北道の共同墓地に埋葬されました。彼の文学と批評に対する姿勢は、今後の朝鮮文学に多くの影響を与え続けることとなります。

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