金環蝕 (久米正雄の小説)

金環蝕（1934年の映画）

『金環蝕』は、久米正雄の同名小説を原作とした1934年（昭和9年）製作・公開の日本のサイレント映画です。監督は清水宏が務め、松竹蒲田撮影所が製作しました。

概要

原作は、1934年に『キング』誌に掲載された久米正雄の小説で、翌年には新小説社から単行本が刊行されました。映画化にあたっては、荒田正男が脚色を担当し、清水宏が監督を務めました。無声映画でありながら、江口夜詩による劇伴がつけられたサウンド版として公開されました。音楽録音は、後に土橋式トーキーで知られる土橋晴夫が担当しています。

2013年には、東京国立近代美術館フィルムセンターで清水宏監督の回顧上映が行われ、2010年にはイタリアのポルデノーネ無声映画祭でも上映されました。

スタッフ

監督: 清水宏
原作: 久米正雄
脚色: 荒田正男
撮影: 佐々木太郎
音楽: 江口夜詩
製作: 松竹蒲田撮影所

キャスト

大崎修吉: 藤井貢
西村絹枝: 川崎弘子
岩城鞆音: 桑野通子
神田清次: 金光嗣郎
岩城圭之輔: 藤野秀夫
鞆音の弟・茂: 突貫小僧

ストーリー

物語は、農村を舞台に、法学士となった神田が帰省するところから始まります。村人たちは、美しい絹枝こそ神田の結婚相手にふさわしいと噂しますが、絹枝は神田の旧友である大崎に恋心を抱いています。しかし、大崎は代議士の娘である鞆音と親しくなり、複雑な三角関係に陥ります。

政変によって岩城家が没落すると、大崎は岩城家を去り、運転手として働き始めます。そこで出会ったカフェの女給・嘉代は、絹枝の面倒を見ており、絹枝は自分が探している男がいることを打ち明けます。嘉代が絹枝を自宅に連れて行くと、そこには大崎がいました。しかし、絹枝は大崎と嘉代が夫婦のように暮らしているのを見て、自分が好きなのは神田だと告げて去ります。

神田と鞆音の結婚式に嘉代が駆けつけ、結婚をやめさせようとしますが、神田は事実を伝えます。絹枝は傷心から酒浸りになり、中年男の愛人になろうとします。二人が乗ったタクシーには、大崎が助手席に乗っていました。熱海で降りた後、大崎は二人を追い、男を殴り倒します。そこへ神田夫妻も現れ、自分たちは洋行すると告げます。そして、郷里へ帰る汽車の中には、大崎と絹枝がいました。

テーマ

『金環蝕』は、愛、裏切り、そして社会の変化といったテーマを探求しています。登場人物たちは、それぞれの欲望や感情に翻弄されながら、運命に立ち向かっていきます。映画は、当時の社会情勢や人々の価値観を反映しながら、普遍的な人間の心理を描き出しています。

評価

『金環蝕』は、清水宏監督の代表作の一つとして高く評価されています。繊細な演出と、俳優たちの演技によって、複雑な人間関係が鮮やかに描き出されています。また、無声映画でありながら、音楽を効果的に使用することで、登場人物たちの心情を豊かに表現しています。

外部リンク

金環蝕 - 日本映画データベース
金環蝕 - allcinema ONLINE
* 金環蝕 - allcinema

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