川崎弘子

川崎弘子：哀愁を帯びた美貌で魅せた松竹蒲田の女優

川崎弘子（かわさき ひろこ、1912年4月5日 - 1976年6月3日）は、昭和初期に松竹蒲田撮影所を中心に活躍した日本の女優です。本名は石渡シヅといい、通称は静子でした。その美貌と哀愁を帯びた演技で、多くの観客を魅了しました。

生い立ちとデビュー

川崎弘子は、現在の川崎市川崎区に位置する川崎大師の近くで生まれました。実家は和菓子屋でしたが、父親が事業に失敗し、幼くして亡くなったため、生活は困窮しました。大師高等小学校を卒業後、料理屋やガラス工場で働く中、俳優の木村健児にスカウトされ、1929年2月に松竹蒲田に入社しました。芸名の川崎弘子は、生誕地である川崎大師と弘法大師にちなんで名付けられました。同年、佐々木恒次郎監督の『女性の力』でデビューを果たしました。

人気女優へ

主にメロドラマで活躍した川崎弘子は、その美しい容姿と繊細な演技で人気を博し、入社翌年には早くも準幹部に昇進しました。1932年には幹部となり、トップスターの仲間入りを果たします。同年には、大磯の坂田山心中事件を題材とした五所平之助監督の『天国に結ぶ恋』で主演を務め、大ヒットを記録。さらに、同じく五所監督の『不如帰』では、林長二郎と共演し、その人気を不動のものとしました。

結婚と人気低迷、そしてカムバック

しかし、1935年に、離婚歴があり、麻雀賭博や結婚詐欺の疑いで警察の厄介になっていた福田蘭童と結婚したことで、川崎弘子の人気は急速に低下しました。それでも、1936年に佐分利信と共演した『人妻椿』は空前の大ヒットとなりました。1939年には大幹部に昇進しましたが、1942年頃から病気がちになり、徐々に役も小さくなっていきました。1947年に一度引退しましたが、1951年にカムバックを果たし、その後も映画に出演しました。しかし、1958年に再び引退し、女優としてのキャリアを終えました。

晩年

1970年頃から肝臓を患い、1976年に肝硬変のため死去しました。享年64歳。墓所は川崎市平間寺にあります。

主な出演作品

1929年：『ステッキガール』
1930年：『朗かに歩め』『不景気時代』
1931年：『淑女と髯』『七つの海 前篇 処女篇』
1932年：『天国に結ぶ恋』『不如帰』
1933年：『沈丁花』
1936年：『人妻椿』
1946年：『歌麿をめぐる五人の女』
1951年：『わかれ雲』
1955年：『乳房よ永遠なれ』

その他の情報

所属：松竹キネマ、松竹蒲田撮影所、松竹大船撮影所
* 親族：石橋エータロー（義理の息子）

川崎弘子は、その短い生涯の中で、数多くの映画に出演し、観客の心を捉え続けました。彼女の哀愁を帯びた美しさと、繊細な演技は、今もなお多くの人々に記憶されています。

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