金神

金神(こんじん)とは



金神とは、方位を司る神の一種で、『簠簋内伝』に記述が見られる、古くから恐れられてきた神です。金神の存在する方位は、あらゆる物事が凶とされ、特に土を動かすことや、建築、引っ越し、旅行などが忌み嫌われました。もし金神の障りを犯すと、家族7人に死が及ぶとされ、7人に満たない場合は隣の家の者まで殺されるという「七殺(ななさつ)」の言い伝えがあり、人々を恐怖に陥れてきました。

金神の正体



金神の中でも特に恐れられた「うしとらの金神」は、夜叉の国を治める巨旦大王の魂であるとされています。巨旦大王の眷属の魂もまた、金神として恐れられていました。また、その魂が抜けた後の屍は、牛頭天王によって五つに引き裂かれ、それぞれが五節句の祭りに捧げられたと伝えられています。

1月1日:紅白の鏡餅(巨旦の骨肉)
3月3日:蓬の草餅(巨旦の皮膚)
5月5日:菖蒲のちまき(巨旦の髭と髪)
7月7日:小麦の素麺(巨旦の筋)
9月9日:黄菊の酒(巨旦の血)

金神の巡行



金神の居場所は、その年の十干によって変化します。

甲・己の年:午・未・申・酉
乙・庚の年:辰・巳
丙・辛の年:子・丑・寅・卯・午・未
丁・壬の年:寅・卯・戌・亥
戊・癸の年:子・丑・申・酉


金神は常に同じ場所に留まっているわけではなく、一定期間遊行(ゆうぎょう)します。この期間中は、金神が遊行した方角以外は障りを犯しても差し支えないとされています。これは、金神が常に同じ場所に留まっていると不便であるため、設けられたと考えられます。

また、春の丑の日、夏の申の日、秋の未の日、冬の酉の日は「間日(まび)」とされ、金神の障りを気にせずに過ごせるとされました。

大金神・姫金神



後に、金神と似た性質を持つ「大金神」と「姫金神」という方位神が作られました。これに伴い、元の金神は「巡金神」と呼ばれるようになりました。

大金神と姫金神は、その年の十二支によって居場所が変化し、常に正反対の位置に存在します。

金神信仰の広まり



金神の信仰は、白河天皇の時代に陰陽家と対立した清原定俊が金神の障りを主張したことが始まりとされています。人々は金神を恐れる一方で、強力な神として信仰する者も多くいました。

江戸時代末期には、岡山県地方で金神を封じる祈祷を行う修験者が現れたり、出雲の神々に家を捧げて金神から守ってもらおうとする「出雲屋敷」という信仰も生まれました。しかし、金神を神として崇め、信仰する人々も現れました。

倉敷市船穂町には、「堅磐谷の元金神」と呼ばれる小野うたという女性がいました。彼女は7人の子供を亡くし、最後に残った娘も盲目になったことで、金神を拝む人々にすがり、金神の信仰に入りました。祈祷によって金神が降臨し、その口を通して語り始めたことから、人々は金神を信仰するようになったとされています。その後、祭りには多くの人々が集まるようになり、門前には菓子屋などが建ち並んだそうです。

また、金神の祟りで何度も転居を余儀なくされた香取繁右衛門(亀山の金神)と、その兄で金神の祟りで家族を何人も亡くし、自身も瀕死の大病を患った川手文治郎(後の赤沢文治、金光大神、大谷の金神)は、金神の啓示と自身の体験をもとに、金神は土地の神であり、人々に崇められるのを待っていると説きました。彼らは金神を信仰することで、逆に素晴らしい加護が得られると人々に伝え、それぞれ香取金光教金光教という宗教を創設しました。

明治時代には、京都(綾部)の出口なおに艮の金神が降臨し、その啓示によって、金神こそが世界の根本神であり、世の立て替えが行われると伝えました。彼女は出口王仁三郎と共に大本を創設し、金神信仰を広めることに貢献しました。

このように、金神は恐れられる存在でありながらも、人々に信仰され、宗教的な背景を持つ神として、現代にまで影響を残しています。

出雲屋敷



中国地方や出雲大社の分社周辺には、「出雲屋敷」と呼ばれる信仰があります。これは、金神の祟りを恐れる人々が、出雲の神々を祀り、金神から守ってもらおうとするものです。

関連項目



大将軍 ([[方位神)]]
太白

外部リンク



* 金神カレンダー

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