大将軍 (方位神)

大将軍とは

大将軍（たいしょうぐん、だいしょうぐん）は、陰陽道において方位の吉凶を司る八将神の一柱であり、魔王天王とも呼ばれる大鬼神です。仏教における本地は他化自在天とされます。

大将軍の起源

古代中国では、明けの明星を「啓明」、宵の明星を「長庚」または「太白」と呼び、軍事を司る星神としていました。これが日本の陰陽道に取り入れられ、太白神や金神、そして大将軍となったとされています。これらは全て金星に関連する星神であり、金気は刃物に通じることから、荒ぶる神として、特に暦や方位の面で恐れられました。

方位の神としての性質

大将軍は3年ごとに居を変え、その方角は万事に凶とされ、特に土を動かすことが良くないとされました。大将軍のいる方角は3年間変わらないため、その方角を忌むことを「三年塞がり」と呼びます。しかし、大将軍には「遊行日」というものが定められており、その期間中は凶事が無いとされていました。

大将軍の年毎の方位は十二支によって以下のように定められています。

亥・子・丑の年：西の方角
寅・卯・辰の年：北の方角
巳・午・未の年：東の方角
申・酉・戌の年：南の方角

また、遊行日は以下の通りです。

春の土用（立夏前）：甲子日～戊[[辰]]日（東方に遊行）
夏の土用（立秋前）：丙子日～庚[[辰]]日（南方に遊行）
秋の土用（立冬前）：庚子日～甲[[辰]]日（西方に遊行）
冬の土用（立春前）：壬子日～丙[[辰]]日（北方に遊行）

大将軍と神仏習合

大将軍は牛頭天王の息子とされ、スサノオと同一視されることもあります。ただし、牛頭天王自体が後にスサノオと習合したという経緯があります。

大将軍を祀る神社

京都では、桓武天皇が平安京遷都の直後、大将軍を祭神とする4つの大将軍神社を四方に置きました。具体的には、東に左京区岡崎、西に上京区紙屋川、北に北区大徳寺門前、南は所在不明とされています。現在のこれらの神社は以下の場所にあり、祭神はスサノオに変わっています。

東：左京区の岡崎神社と、東山区の東三条大将軍神社
西：上京区の大将軍八神社
北：北区の今宮神社摂社疫神社と、西賀茂大将軍神社
南：伏見区の藤森神社境内

また、これらとは別に、祇園社（八坂神社）も大将軍を祭っています。北区には大将軍という地名も残っています。

現代に残る大将軍の影響

2000年4月、山形市の下水道工事において、工事を断る世帯が相次ぎ、工事が遅々として進まないというニュースが報道されました。工事を断る理由として、経済的理由の次に多かったのが「大将軍」でした。2000年は辰年で大将軍は北の方角に位置しており、住民の多くが屋敷の北に浴室や便所があったため、工事を忌避したのです。

この事例は、方忌呪術が、かつて徳川家が天下を取っていた時代に禁止されたものの、徳川家の支配があまり強く及ばなかった山形県にはそれが残り、現在でも方忌呪術が残っていることの由来と言われています。

関連項目

方位神
大将軍神社
* 金神／太白

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