金紅石

ルチルについて

ルチル（英: rutile）は、二酸化チタン（TiO2）からなる結晶性の鉱物であり、その結晶構造は正方晶系に属します。ルチルという名前は、ドイツの鉱物学者アブラハム・ゴットロープ・ウェルナーによって付けられました。この名称は、ラテン語の「rutilus」に由来し、赤色を意味します。特に光の下で見たときに現れる赤みがかった色合いが、ルチルの特徴となっています。別名では金紅石とも称されることがあります。

ルチルは、主に火成岩や変成岩の中で副成分として存在し、金属含有量が約60%に達することがある、重要な鉱石です。そのため、チタンの重要な鉱石として、チタンを取り出すための資源としても重用されています。また、ルチルと化学組成が似ている鉱物としては鋭錐石（アナテース）、板チタン石（ブルカイト）、アカオギ石（Akaogiite）が存在します。

宝石としてのルチル

ルチルの宝石としての特性についても触れておきます。ルチルは屈折率が2.62から2.90に達し、これはダイヤモンドをも上回る数値です。しかし、天然のルチルは結晶が小さいか透明でないため、宝石としての利用は稀です。それでも、石英内に針状結晶としてルチルが入り込んでいることがあり、このような石は「針入り水晶」として装飾品に用いられることがあります。また、ルビーやサファイアに含まれるルチルは、特有のスター効果を生じることがあります。この効果は、ルチルが双晶を形成しやすい性質が影響しています。

1948年からは人工宝石としてのルチルの生産も開始されました。特に1950年代中頃までは、無色透明なルチルが「Titania」や「レインボーダイヤモンド」としてダイヤモンドの代用品として流通していました。ただし、モース硬度が比較的低く、別のダイヤモンドの模造品であるチタン酸ストロンチウムの技術が発見されると、自然とその需要は衰退していきました。

ルチルグループ

ルチルグループには他にも多くの鉱物が属しています。代表的なものを以下に示します:

• - ルチル（rutile）: TiO2
• - 軟マンガン鉱（pyrolusite）: MnO2
• - アルグ石（argutite）: GeO2
• - 錫石（cassiterite）: SnO2
• - パラテルル石（paratellurite）: TeO2
• - プラットナー石（plattnerite）: PbO2
• - スティショフ石（stishovite）: SiO2

結晶構造

ルチルは、その結晶構造がルチル型と呼ばれる正方晶系であり、各パラメーターは a=4.584 Å、c=2.953 Å です。このため、ルチルの密度はおよそ4240 kg/m3という高い数値を示します。

参考文献

• - 松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年。
• - 国立天文台編『理科年表 平成20年』丸善、2007年。
• - 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年。

ルチルはその美しさと性質から、地質学や宝石学の観点から広く興味を持たれています。

もう一度検索