金貞烈

金貞烈（キム・ジョンニョル）

金貞烈（キム・ジョンニョル、きん ていれつ、1917年9月29日 - 1992年9月7日）は、大日本帝国陸軍と大韓民国空軍の軍人、そして政治家として活躍した人物です。初代大韓民国空軍参謀総長、第19代国務総理を歴任しました。最終階級は、日本軍人としては大尉、韓国軍人としては中将です。創氏改名時の日本名は香川貞雄（かがわ さだお）、号は「曙巖」（ソアム、서암）です。また、同じく韓国空軍軍人の金英煥は弟にあたります。

生い立ちと日本軍での活動

金貞烈は、京城（現在のソウル）の裕福な両班の家庭に生まれました。慶州金氏の名家で、父と伯父も大韓帝国軍人でした。1940年に陸軍航空士官学校を卒業後、明野陸軍飛行学校で学びました。1941年には飛行第4戦隊に配属され、太平洋戦争初期にはフィリピン攻略戦に参加しました。マレー作戦に参加した朝鮮人将校は、金貞烈を含め3人だけでした。

その後、日本本土防衛、部隊創設責任者、戦闘機中隊長などを歴任し、各地を転戦しました。1944年には大尉に昇進し、ジャワ島で第35教育飛行隊を創設しました。スマトラ島では、三式戦「飛燕」に搭乗し防空にあたり、終戦間際には明野陸軍飛行学校甲種学生教官に任命されるも、プノンペンで終戦を迎えることとなりました。

韓国軍での活躍と政治の世界へ

1948年、南朝鮮国防警備隊に入隊し、韓国空軍の独立に尽力。1949年には初代空軍参謀総長に就任しました。朝鮮戦争勃発時には、アメリカから導入したP-51Dマスタング戦闘機に自ら搭乗し、陸軍の近接支援作戦を指揮しました。

1952年には在東京国連軍総司令部韓国軍連絡将校団団長、1954年には再び空軍参謀総長に就任しました。1957年に予備役編入後は国防部長官に就任しましたが、四月革命の際には李承晩大統領に辞任を促し、自身も国防部長官を退任しました。

1961年の5・16軍事クーデター後は、朴正煕の民主共和党の初代党議長、駐米大使、反共連盟理事長、国会議員などを歴任しました。

実業家、そして国務総理へ

国会議員を退任後は実業界に転身し、三星物産社長、大韓商工会議所副会長などを務めました。1980年には、全斗煥政権で平和統一諮問会議の首席副議長として公職に復帰し、第五共和国における最後の国務総理を務めました。

死後の評価とその他

2005年には、進歩派の市民団体により親日人名辞書に収録される予定者リストに加えられ、親日派としての側面も指摘されています。山崎豊子の小説『不毛地帯』に登場する「光星物産会長・李錫源」は、金貞烈がモデルであると言われています。

金貞烈は、激動の時代を軍人、政治家、実業家として生きた人物であり、その生涯は韓国近現代史を語る上で欠かせないものとなっています。親日派としての評価はありますが、その功績は韓国の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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