金鈴塚古墳

金鈴塚古墳：古代の首長の権威を示す遺産

金鈴塚古墳は、千葉県木更津市長須賀に位置する、6世紀末から7世紀初頭にかけて築造された前方後円墳です。この古墳は、祇園・長須賀古墳群に属し、その中でも特に重要な存在として知られています。

古墳の概要

金鈴塚古墳は、全長約100メートルの規模を誇る前方後円墳です。かつては二子塚古墳と呼ばれていましたが、1950年の発掘調査で未盗掘の横穴式石室から金製の鈴5つを含む多数の貴重な遺物が発見され、その発見にちなんで金鈴塚古墳と改名されました。出土品の内容から、この古墳は前方後円墳の終末期に築造されたと考えられています。

被葬者は、小櫃川流域を支配した有力な首長であり、馬来田国造との関連も指摘されています。古墳の規模は、前方後円墳の終末期としては全国有数であり、石室の一部には当時としては新しい技術である切石が用いられています。

古墳の立地

金鈴塚古墳は、小櫃川によって形成された沖積平野に位置しています。かつて砂丘であった微高地を選んで築造されており、周囲は低湿地が広がっていました。明治時代には古墳として認識され、墳丘上に祠が建てられていましたが、その後、周辺の低湿地の埋め立てに利用されたため、墳丘の大部分が失われました。1950年の発掘調査時には、前方部がほぼ消失し円墳のような形状になっていました。

近年、木更津市の都市化によってさらに墳丘が削られ、現在では後円部の一部のみが残っています。

祇園・長須賀古墳群との関連

金鈴塚古墳が属する祇園・長須賀古墳群は、5世紀前期から古墳の造営が始まったとされ、特に6世紀後半から7世紀初頭にかけて盛んに古墳が築造されました。金鈴塚古墳は、この古墳群の中で最後に造られた前方後円墳であり、古墳群内の盟主墳の一つと考えられています。同時期には、丸山古墳など、他の前方後円墳や円墳も築造されています。

金鈴塚古墳の後に、方墳である松面古墳が築造されたと考えられており、この点は、関東地方の有力な古墳群に見られる特徴です。

古墳の構造

金鈴塚古墳は、西に前方部、東に後円部を持つ全長約100メートルの前方後円墳です。墳丘の周囲には二重の周濠があり、周濠を含めた全長は約140メートルと推定されています。墳丘は二段築成で、高さは築造当時は約6メートルあったと推定されます。

後円部には、南側に入口を持つ横穴式石室があり、富津市付近で産出する砂岩が用いられています。石室は袖無し型で、全長約9.6メートル、最大幅約2.2メートル、高さ約2メートルです。石室は自然石を積み上げて造られていますが、一部に加工された切石も使用されており、特に床には砂岩の切石が敷かれています。

石室内には、埼玉県の長瀞渓谷付近で産出される緑泥片岩で作られた組み合わせ式の石棺があります。

古墳発掘の経緯

金鈴塚古墳は、大正時代から発掘の計画がありましたが、1932年頃の道路工事で石室入口の一部が削られました。1950年、古墳の保存と発掘を求める声が高まり、千葉県の史跡調査委員会と早稲田大学考古学研究室によって発掘調査が行われました。調査の結果、石室から多数の副葬品が発見され、金鈴にちなんで金鈴塚古墳と改名されました。

その後、1998年から2003年にかけて範囲確認調査が行われ、2003年には後円部の測量と石室内の再発掘調査が行われました。

出土品

金鈴塚古墳からは、埴輪は出土していませんが、横穴式石室からは大量の遺物が出土しました。石室には少なくとも3体の遺体が埋葬されており、金鈴、琥珀製の棗玉、ガラス玉、金銅製の冠、鏡、銅鋺、金銅製馬具、鉄矛、鉄鏃、飾大刀、須恵器などが出土しました。

石棺内からは、鏡、銅鋺、甲冑、鉄鏃、飾大刀、金銅製の耳輪やガラス玉などの装身具が出土しています。また、石棺の脇からは金銅製馬具が出土しました。

出土した須恵器や飾大刀の形式、石室の一部に切石が用いられていることから、金鈴塚古墳は6世紀末から7世紀初頭に築造されたと考えられています。

金鈴塚古墳の特徴

金鈴塚古墳の最大の特徴は、その名の由来となった金鈴をはじめとする豪華な副葬品です。特に、石室から21口もの飾大刀が出土しており、これは日本の古墳の中でも有数の数です。また、石室の一部に切石を用いるなど、先進的な技術が用いられていたことも注目されます。

古墳の規模も重要で、6世紀後半に前方後円墳の築造が衰退する中で、金鈴塚古墳は関東地方最大級の古墳の一つです。古墳の築造状況や副葬品の内容からは、当時のヤマト王権内での関東地方の重要性が増していたこと、そして小櫃川流域の首長が重要な地位を占めていたことが窺えます。

金鈴塚古墳の石棺に用いられた緑泥片岩は、埼玉県の長瀞付近で産出されたものであり、当時の水運を用いて運ばれたと考えられています。また、金鈴塚古墳の石室に用いられた砂岩は、埼玉古墳群の将軍山古墳でも用いられており、当時の地域間の交流を示す証拠となっています。

金鈴塚古墳を築造した首長は、馬来田国造との関連が指摘されており、小櫃川流域の頂点に立つ首長として、ヤマト王権内での地位を高めていたと考えられています。また、近隣の内裏塚古墳群を築造した首長や、関東地方の他の有力首長との間にも交流があったことが示唆されています。

出土品の保存と公開

金鈴塚古墳の出土品と石棺は、1959年に重要文化財に指定されました。1956年には木更津市内に金鈴塚遺物保存館が開館し、その後、出土品の保存修理事業が行われました。現在、出土品は木更津市郷土博物館金のすずで保存・公開されています。

まとめ

金鈴塚古墳は、古代の首長の権威を示す貴重な遺産であり、古墳時代後期の社会構造や文化を解明する上で重要な役割を果たしています。その豪華な副葬品や先進的な築造技術は、当時の人々の技術力や文化水準の高さを物語っています。古墳の歴史を学ぶことは、私たちの祖先の暮らしや社会を理解する上で欠かせないものとなるでしょう。

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