内裏塚古墳群

内裏塚古墳群とは

内裏塚古墳群は、千葉県富津市の小糸川下流域に広がる古墳時代中期から終末期にかけての古墳群です。沖積平野に位置し、47基の古墳が確認されています。その内訳は、前方後円墳11基、方墳7基、円墳29基です。かつては「飯野古墳群」と呼ばれていましたが、古墳群内で最大の内裏塚古墳にちなみ、現在では「内裏塚古墳群」という名称が一般的です。

名称の由来

古墳群は、旧飯野村を中心に分布していたため、当初は「飯野古墳群」と呼ばれていました。しかし、旧青堀町にも古墳が所在していたことから、「富津古墳群」や「内裏塚古墳群」という名称が提案されました。最終的には、古墳群内で最大の内裏塚古墳にちなみ、「内裏塚古墳群」という名称が広く使われるようになりました。ただし、内裏塚古墳自体は古墳群の中で最も古く、古墳群の最盛期とは時代が異なるため、名称の妥当性を疑問視する専門家もいます。

立地と構成

古墳群は小糸川が形成した沖積平野に位置し、約2キロメートル四方の範囲に広がっています。古墳の多くは、かつて砂丘であった微高地上に築造されています。これらの微高地は、北東から南西方向に伸びており、前方後円墳もこの地形に合わせて築かれています。

古墳群には、現在までに47基の古墳が確認されていますが、墳丘が残っているのは25基のみで、22基は既に消滅しています。実際には、さらに多くの古墳が築造されたと考えられています。古墳群の盟主墳の被葬者は、須恵国造の祖先にあたる首長であると推測されています。

古墳の築造は、5世紀半ばの内裏塚古墳から始まり、5世紀後半の上野塚古墳へと続きます。その後、約半世紀の中断を経て、6世紀半ばに九条塚古墳が築造され、6世紀末にかけて古墳群は最盛期を迎えます。この時期には、墳丘長100メートルを超える盟主墳、その下に位置する前方後円墳、そして円墳が盛んに築造されました。7世紀に入ると、前方後円墳の築造は終わり、方墳が築造されるようになります。

古墳群の歴史

古墳群誕生以前

小糸川流域では、内裏塚古墳以前には、4世紀に中・上流域の丘陵上に小規模な古墳が築造された程度でした。近隣の小櫃川流域や養老川流域では、大規模な前方後円墳が築造されていたのとは対照的です。ただし、小糸川下流域では、弥生時代後期から古墳時代にかけての集落跡が複数確認されていることから、未発見の前期古墳の存在を指摘する専門家もいます。

内裏塚古墳と古墳築造の中断

内裏塚古墳群で最初に築造された内裏塚古墳は、南関東最大の前方後円墳であり、5世紀半ばに築造されました。その後の上野塚古墳の築造後、約半世紀にわたり古墳築造は中断します。この中断は、首長権の弱体化やヤマト王権の混乱が影響していると考えられています。

古墳築造の再開と古墳群の最盛期

6世紀半ばに九条塚古墳の築造を機に古墳築造は再開され、その後、稲荷山古墳や三条塚古墳などの盟主墳が相次いで造営されます。同時期には、これらに次ぐ規模の前方後円墳や円墳も多く築造され、内裏塚古墳群は最盛期を迎えます。古墳群内では、複数の系統の首長が同時に古墳を築造しており、古墳群が結束を誇示する場でもあったと考えられています。

青木亀塚古墳の謎

古墳群内3位の規模を持つ青木亀塚古墳は、埴輪が全く検出されないこと、石室の痕跡がないことなどから、築造途中で放棄された可能性が指摘されています。

方墳の築造期と古墳群の終焉

7世紀に入ると、内裏塚古墳群では方墳が築造されるようになります。割見塚[[古墳]]は、千葉県内でも最大級の方墳で、長大な横穴式石室を有しています。しかし、7世紀後半には古墳の築造は終わりを迎え、龍角寺古墳群のように寺院が権威の象徴となることはなく、少し離れた場所に九十九坊廃寺が建立されました。

内裏塚古墳群の特徴

内裏塚古墳群は、隣接する祇園・長須賀古墳群とともに、上総西部の有力首長の墓所として機能しました。小糸川流域の首長は、三浦半島から房総半島への交通路を押さえることで力を蓄え、ヤマト王権との関係を強化しました。古墳群からは、豊富な副葬品が出土しており、横穴式石室の使用も特徴的です。また、複数の人骨が検出されることから、長期間にわたって追葬が行われていたと考えられています。内裏塚古墳群は、関東地方の首長のあり方を知る上で貴重な遺跡であり、内裏塚古墳は国の史跡に、九条塚古墳、稲荷山古墳、三条塚古墳は富津市の指定史跡となっています。

主な構成古墳

前方後円墳

内裏塚古墳
上野塚古墳
九条塚古墳
稲荷山古墳
三条塚古墳
青木亀塚古墳
古塚古墳
西原古墳
姫塚古墳
蕨塚古墳
武平塚古墳

方墳

割見塚[[古墳]]
亀塚古墳
森山塚古墳
野々間古墳
稲荷塚古墳

円墳

白姫塚古墳
丸塚古墳
新割古墳
古山古墳
西谷古墳
八丁塚古墳
* 武平塚南方古墳

これらの古墳は、それぞれ異なる特徴を持ち、内裏塚古墳群の歴史を物語っています。

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