金銀複本位制

金銀複本位制について

金銀複本位制（きんぎんふくほんいせい）は、金貨と銀貨の両方を本位貨幣とし、自由に鋳造や融解し、輸出入が可能な通貨制度です。この制度は、金銀の比価が固定されることを基本原則としています。

概要

この制度のもとでは、金貨と銀貨が両方とも無制限に法定通貨として認められ、かつ造幣局に納入することで少額の手数料で自由に金貨や銀貨に鋳造されます。しかし、金銀比価を固定することによって、相場変動による影響が避けられず、しばしばグレシャムの法則による不安定さが生じました。特に1875年までは、金銀比価はおおむね1:15から1:16の範囲を推移していました。このように金銀の両方を本位貨幣とすることは、市場価格と法定価格の乖離を生むことがあったため、時には金貨が市場から退蔵され、銀貨のみが流通する状況が見られました。

具体的な例を挙げると、もし法定比価が金:銀=1:10で、市場比価が1:20であれば、銀が貨幣に鋳造され、それを金と交換する動きが生じ、金貨が手元に残されることになります。

ヨーロッパの状況

中世のヨーロッパでは、国家において安定した金や銀の供給が困難であったため、金銀複本位制が採用されました。バランスが崩れるたびに改鋳を行い、比価の維持に努めていました。イギリスが1816年に金本位制に移行すると、他の諸国もfollow suitしました。

イギリスでは、1717年に造幣局長アイザック・ニュートンが金銀比価を設定しましたが、その後の流動は意図したものではなく、悪貨である金貨が流通を独占し、銀貨は海外に流出しました。このため、銀貨の法定通用量は制限され、最終的に1816年の改正で金本位制が採用されました。

フランスでも、金銀比価を調整して金貨と銀貨の自由鋳造を認めましたが、1873年になると金本位制に切り替わり、自由鋳造が廃止されました。アメリカでは、1792年に金銀比価を固定しながらも、徐々に金本位制に移行していきました。

日本の制度

日本でも、金と銀は別々の貨幣単位として使用されていましたが、藩や幕府による金銀比価の定めがありました。明治に入ると、新貨条例の制定により金本位制へと移行しましたが、国際市場との関わりから銀本位制も併用されることとなりました。

最終的に、明治11年には金銀複本位制が正式に採用され、銀貨も本位貨幣として扱われることが決まりました。しかし、インフレーションによって両貨幣の流出が進み、名目上の存在となってしまったのです。その後、日本は一時的に銀本位制に戻りましたが、1897年に金本位制に復帰しました。

結論

金銀複本位制は、歴史を通じてさまざまな国で試されましたが、マーケットの変動や流通のバランスを維持する上で困難を呈し、最終的にはほとんどの国が金本位制に移行していきました。この制度の存続は、法定通貨の安定性や市場の変動に大きく依存していることを示しています。

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