金順

金順（きんじゅん、ギンシュウェン、満洲語：ᡤᡳᠨᡧᡠᠸᡝᠨ、転写：ginšuwen、1831年 - 1886年）は、清朝末期の軍人であり、その生涯は動乱の時代と深く結びついています。字は和甫といい、満州族の中でも由緒ある鑲藍旗（しょうらんき）の出身です。彼の氏族はイルゲンギョロ氏（irgen-gioro hala、伊爾根覚羅氏）として知られ、現在の吉林省にあたる地域で生まれました。

金順は、軍人としてのキャリアをドロンガ（多隆阿）の部隊に属して山東省に駐屯したことから開始しました。当初は地方での軍務に従事していましたが、その後の活躍はめざましいものでした。湖北省での太平天国軍との戦いでは、その優れた指揮能力と勇敢さを示し、数々の功績を挙げました。この戦いでの貢献により、金順は軍内部でその名を知られるようになり、その後の昇進の足がかりとなりました。

太平天国の乱が鎮圧された後、清朝は新たな問題に直面します。同治2年（1863年）から始まった回民蜂起の鎮圧です。この内乱においても、金順は鎮圧軍の一員として前線に立ち、その手腕を発揮しました。回民蜂起の鎮圧に貢献したことで、金順はさらに信任を得るようになりました。

同治13年（1875年）には、金順は都統という要職に昇進し、翌年には阜康（フカン）に駐屯しました。この頃、中央政府は新疆地方の安定化を重視しており、軍機大臣左宗棠（さそうとう）の指揮下で、金順と劉錦棠（りゅうきんとう）はヤクブ・ベクの乱鎮圧という重要な任務を担うことになりました。

金順は、劉錦棠とともに、この反乱鎮圧において中心的な役割を果たしました。ウルムチ、サンジ・シャヒリ、クトゥビといった重要な拠点を次々と陥落させ、反乱軍を追い詰めていきました。最終的には、マナスにまで迫り、反乱軍の勢力をほぼ壊滅させました。この功績により、金順はイリ将軍に任命され、新疆地方における軍事的な最高責任者となりました。

イリ将軍となった金順は、光緒7年（1881年）にイリ地方を接収するという重要な任務を遂行しました。さらに、ロシアとの国境を画定するという外交的な役割も担い、清朝の領土保全に大きく貢献しました。イリ地方の接収と国境画定は、清朝の新疆地方における影響力を再確立する上で、非常に重要な出来事でした。

これらの功績にも関わらず、金順の生涯は長くは続きませんでした。イリ地方の任務を終えた後、金順は北京に呼び戻されることになりましたが、帰途の粛州（しゅくしゅう）で病に倒れ、そのままこの世を去りました。その死は、清朝にとって大きな損失であり、多くの人々が彼の死を悼みました。

金順の死後、その功績を称え、太子太保（たいしほ）の位と忠介（ちゅうかい）という諡号（しごう）が贈られました。これは、金順が清朝に尽くした忠誠心と、その業績を高く評価した結果でした。金順の生涯は、動乱の時代において、一人の軍人がどのように生きたのか、そしてその功績がいかに後世に影響を与えたのかを示す良い例と言えるでしょう。

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