劉錦棠

劉錦棠（りゅう きんとう、1844年 - 1894年）は、清朝末期の軍人であり官僚です。字は穀斎といい、湖南省湘郷県の出身です。彼は湘軍の軍人であった父・劉厚栄と叔父・劉松山の影響を受け、幼少の頃から軍事的な環境で育ちました。

10歳の時に父が太平天国軍との戦いで戦死するという悲劇に見舞われましたが、成長すると叔父の劉松山の部隊に加わりました。彼は江西省に展開していた叔父の部隊で頭角を現し、湘軍の司令部があった祁門の護衛で功績をあげ、劉松山とともに曽国藩から賞賛されました。1864年の太平天国の滅亡後も、劉錦棠は叔父と共に捻軍との戦いで数々の戦功を重ね、その武勇を示しました。

その後、劉松山と劉錦棠は左宗棠の指揮下に入り、陝西省・甘粛省における回民蜂起の鎮圧に尽力しました。金積堡の戦いでは、馬化龍率いる回民軍を包囲しましたが、1870年に劉松山が戦死してしまいます。劉錦棠は、叔父の部隊を引き継ぎ、翌1871年に金積堡を陥落させました。さらに1872年には西寧を攻撃し、白彦虎らの回民軍を敗走させるなど、その軍事的な才能を発揮しました。

1870年代には、ヤクブ・ベクの乱が発生し、劉錦棠は1876年2月に司令部を甘州から粛州に移しました。7月には、湘軍25営1万3000人を率いて、満州八旗の金順（ギンシュウェン）率いる40営2万1000人と共に、先鋒として新疆に侵攻し、ウルムチを攻略しました。ウルムチ占領後は、金順が北部を掃討し、劉錦棠は天山南路の掃討にあたりました。これらの戦いにおける彼の卓越した指揮能力と戦略は、清朝の勢力回復に大きく貢献しました。

1884年に新疆省が設置されると、劉錦棠は初代巡撫に任命され、1889年までその職を務めました。彼は、行政官としても手腕を発揮し、新疆の安定と発展に尽力しました。彼の在任中、新疆は政治的にも経済的にも安定し、その功績は高く評価されています。

劉錦棠は、軍人として、また官僚として、清朝末期の激動の時代において、重要な役割を果たしました。死後、その功績を称えられ、襄勤の諡号を贈られました。彼の著作としては、『劉襄勤公奏稿』が残されています。この書は、彼の政策や考え方を後世に伝える貴重な資料となっています。劉錦棠は、武勇と行政手腕を兼ね備えた稀有な人物として、清朝の歴史に名を残しています。

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