ヤクブ・ベクの乱

ヤクブ・ベクの乱

ヤクブ・ベクの乱は、清の支配を受けていた東トルキスタン（現在の新疆ウイグル自治区）において、1860年代から1870年代にかけて発生した大規模な戦いです。ムスリムの蜂起によって東トルキスタンは一時的にヤクブ・ベクによって統一されましたが、その後清の左宗棠に敗北し、ヤクブ・ベク政権は崩壊を迎えます。この乱の歴史的背景を理解するためには、まず清朝の東トルキスタンに対する統治や、ムスリム社会の政治的状況を振り返る必要があります。

前史・背景

清王朝は1690年から1759年にかけて、ジュンガルと呼ばれる地方をめぐって戦争を繰り広げました。この戦争の結果、清は1759年にジュンガルを平定し、以降東トルキスタンを強引に併合しました。その後、清朝は1762年にイリ将軍府を設立し、ムスリム社会における支配を強化しました。在地の有力者に行政権を与える「ベグ官人制」により、地元の社会構造が保存されましたが、これがムスリムの不満を引き起こす一因となりました。

1860年代には、清朝の統治に対する不満が高まり、様々な反乱が発生します。特にムスリム同士の抗争や、清朝の圧政に抵抗する動きが続いていました。特に、雲南省などでのムスリムと漢族間の対立が激化し、回民蜂起が相次ぐことになります。

ヤクブ・ベクの登場

1864年、カシュガルではムスリムの蜂起が起こり、その際にシディク・ベクが一時的に支配権を確立しました。しかし、ヤクブ・ベクの登場によって流れが変わります。ヤクブ・ベクはコーカンド・ハン国の兵を受け入れ、1865年には彼の指揮の下でカシュガルを攻略し、実質的な支配者の地位を確立します。

ヤクブ・ベクは1867年にはバダウレト・ハンと名乗り、名実ともに地域の支配者として権力を確立しました。彼はシャリーアに基づく統治を行い、地域のムスリムの支持を受けました。さらに、ヤクブ・ベクはロシアやイギリスと良好な関係を築き、彼らからの支援を受けることに成功します。

清朝の反応と軍事行動

ヤクブ・ベクの勢力拡大を受けて、清朝内部では彼に対抗するための動きが始まります。左宗棠が主導する主戦派は、清朝の威信を掛けて新疆討伐を宣言し、兵を送り出しました。その後、清軍はウルムチや他の主要都市を次々と制圧していきます。

ヤクブ・ベクの支配下での統治は一定の支持を得ていたものの、次第に彼の統治に対する不満が高まり、これが彼の退位や自死の原因ともなりました。清軍の攻撃が続く中で、ヤクブ・ベクはカラシャールに逃げ込むも反乱は続かず、最終的には彼の勢力圏は縮小し、清朝の再支配が実現します。

結末

1877年、清軍は東トルキスタン全域を再び掌握し、ヤクブ・ベクの乱は歴史の一コマとなりました。その後も清朝は新疆の支配を強化しますが、ヤクブ・ベクの乱はその後の新疆ウイグル自治区の歴史に大きな影響を与える出来事となったのです。彼の統治とその後の反乱は、現在の新疆の状況にも繋がる重要な歴史的事件として記憶され続けています。

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