釜トンネル

釜トンネル

釜トンネルは、長野県松本市安曇中にある、上高地へと続く県道24号上高地公園線上にあるトンネルです。上高地への唯一の車道として、観光客や登山者にとって重要なルートとなっています。

名称の由来

トンネルの名称は、県道と並行して流れる梓川がこの付近で狭くなり、激流がまるで沸騰した湯気のように見えることから「釜ヶ淵」と呼ばれていることに由来します。

概要

現在の釜トンネルは、全長1,310m、幅員7.0m（路肩含む）で、計画交通量は1日あたり2,100台（うち大型車800台）です。設計速度は30km/hで、最大勾配は10.9%にも及びます。トンネルの両端には約100mもの標高差があります。南側の国道158号との分岐点には、冬季通行止め用のバリケードが設置されています。

現在のトンネルは、2002年から2005年にかけて、旧道の代替ルートとして建設されました。国土地理院の地形図では、工事時期の違いにより「釜トンネル」と「釜上トンネル」の記載が見られます。

歴史

釜トンネルには、過去に二つの旧トンネルが存在しました。以下に、それぞれのトンネルの歴史を解説します。

初代釜トンネル (1927年 - 1937年)

初代の釜トンネルは、1927年から1937年まで使用されました。このトンネルは、梓川電力（後の東京電力）が霞沢発電所を建設する際に、工事資材運搬用の軌道として建設されました。当時のトンネルは、手掘りで建設され、「古釜」とも呼ばれていました。

• - 1915年：焼岳の噴火により大正池が誕生。
• - 1926年：梓川電力が霞沢発電所の建設に着手。工事資材運搬用に梓川沿いに軌道が建設。
• - 1927年：工事が完了し、軌道を整理して自動車道として開通。トンネルの長さは320m、幅と高さは2m程度だった。
• - 1933年：私道から県道へ移行し、「松本槍ヶ岳線」の一部に指定。乗合バスが大正池まで運行開始。
• - 1934年：中ノ湯側の坑口付近で大規模な土砂崩れが発生。
• - 1935年：乗合バスが河童橋まで運行。

2代目釜トンネル (1937年 - 2005年)

2代目の釜トンネルは、1937年から2005年まで使用されました。このトンネルは、土砂崩れ対策として建設されたもので、初代のトンネルと接続する形で全長が延長されました。

• - 1937年：土砂崩れ対策のため、中ノ湯側に新たな坑口を開き、初代トンネルと接続。全長は約520mに。
• - 日中戦争中：ガソリン統制でバス運行が中止。トンネルを松根油工場とする計画もあった。
• - 1950年：改修により、幅員・トンネル高が3.2mに。
• - 1964年：雪崩をきっかけに、上高地側坑口にスノーシェッドが設置。その後、スノーシェッドとロックシェッドが延長。
• - その後：上高地への観光客増加に伴い、舗装や照明設置、トンネル内改修、ロックシェッドの延長など改良工事が頻繁に行われた。

しかし、トンネル内の幅員は4.3mと狭く、最大16.5%の急勾配やクランク状の急カーブが存在したため、交互通行となり、渋滞が頻発しました。

• - 1975年：マイカー規制を開始。
• - 1996年：マイカー規制が通年に。
• - 1999年：上高地側坑口付近で大規模な土砂崩れが発生し、上高地が一時孤立。

釜上トンネル (2002年 - )・釜トンネル (2005年 - )

2002年、上高地側に釜上トンネルが供用開始。2005年には、中ノ湯側から釜上トンネルに接続する形で、新たな釜トンネルが供用開始されました。

• - 2001年：2代目・釜トンネル東側に釜上トンネルの建設を開始。
• - 2002年：釜上トンネルの供用を開始。全長605m。
• - 2003年：釜上トンネルと2代目・釜トンネルの接続部分付近から、中ノ湯側へトンネルの掘削を開始。
• - 2005年：全線開通。新しい釜トンネルは2車線が確保され、歩道も設置された。
• - 2011年：集中豪雨による土石流で、トンネル内に岩石が流入。上高地が一時孤立。

交通規制

マイカー規制により、年間を通じて指定車・許可車以外の一般車両の通行は禁止されています。

関連項目

• - 松本電鉄バス
• - 釜ヶ渕堰堤

参考文献

• - 菊地俊朗『釜トンネル―上高地の昭和史』信濃毎日新聞社、2001年。ISBN 4-7840-9914-X。

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