針尾 (給油艦)

針尾（はりお）

針尾は日本海軍の給油艦であり、その名前は長崎県佐世保湾と大村湾を結ぶ針尾瀬戸に由来しています。この艦は1943年に戦没した「風早」の代替艦として建造されました。艦名は仮称艦名第4901号艦として、1TL型タンカーを改造した大型給油艦として設計されました。横曳き、縦曳きの両方の給油設備を追加的に装備し、大発を搭載するためのヘビー・デリックも備えていましたが、戦局の悪化に伴い、実戦ではその能力を生かすことができませんでした。

建造背景

1943年、日本の海軍は戦局の悪化を受けて新たな艦船の建造を急いでいました。針尾はその結果として、播磨造船所によって建造されました。戦時基準での資材不足を考慮し、設計は簡素化されました。そのため、給油設備や補給機能が最低限のものに制限されました。先進的な設備が求められましたが、実際には軽質油タンクは装備されず、給油機能も後部デリックによる横曳きに特化しました。

艦型と装備

針尾は、南邦丸型の戦時標準船を基にした設計で、艦隊随伴任務のために様々な器材が追加されていました。後部デリックは30トンのヘビーデリックとして設計され、艦橋の後方に大発や魚雷艇を数隻搭載できる架台が設けられました。また、対空兵器としては12センチの単装高角砲が艦の前後に装備され、25mm機銃も複数設置されました。電探機器や水測兵器も備えられ、軍艦としての役割を果たすための条件を整えていました。

艦歴

針尾は1944年9月1日に艦名が決まり、竣工後は呉鎮守府に配置され、連合艦隊に附属しました。1945年1月20日、南方からの重要物資を還送するため、南号作戦へ参加するための船団に加わりました。出港時には他の中型タンカーや護衛艦と共に航行し、南下しながら昭南へ向かいましたが、2月7日に機関故障に見舞われ、いったん航行を中断してしまいました。

その後、昭南に到着し、航空ガソリンや錫を積み込み、再び船団に合流することができました。このヒ94船団は、各地を経由しながら航行しましたが、3月3日、琊瑯湾近くで二度触雷し、沈没の危機に直面しました。残念ながら、艦は沈没し、わずか3か月の艦歴を終えることとなりました。最終的に全乗員は救助されましたが、針尾は戦火の中でその使命を全うすることはできませんでした。

歴代艦長

針尾の艤装員長と特務艦長には、宮田栄造大佐が任命され、1944年12月から1945年5月までその役割を担いました。彼の指導の下、針尾は艦としての完成を迎えましたが、戦局の厳しさにより、その運命が大きく左右されることとなりました。

同型艦とその計画

針尾の同型艦としては、稲取、韓崎、龍舞の3隻が建造計画として登場しましたが、戦局の悪化に伴い、建造中止となりました。これにより、針尾は残念ながら最後の栄光を掴み取れなかった艦の一つとなりました。

参考文献

• - アジア歴史資料センター（公式）
• - 駒宮真七郎『戦時輸送船団史』
• - 松井邦夫『日本・油槽船列伝』

この艦の歴史は、日本海軍における戦争の厳しい現実を物語っており、その名は忘れられないものとなっています。

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