鈴木三郎助

2代 鈴木 三郎助

鈴木三郎助（1868年1月21日 - 1931年3月29日）は、味の素の創業者として知られる日本の実業家です。神奈川県出身で、従五位勲四等の位階を受けました。

生い立ちと家業

1868年、相模国三浦郡堀内村（現在の神奈川県葉山町）の商家に、初代鈴木三郎助の長男として生まれました。幼名は泰助といいました。初代三郎助はもともと忠七と名乗り、豪商に奉公に出て独立、「滝屋」を営んでいましたが、泰助が9歳の時に病で亡くなりました。泰助は幼くして家督を継ぐことになります。

尋常小学校を卒業後、耕余塾で学びましたが、米穀商で奉公に出ます。18歳で家に戻り、2代目三郎助を襲名。呉服商の娘テルと結婚しました。しかし、商売は次第に苦しくなり、米相場に手を出すようになります。

ヨード製造への転換

葉山が静養地として人気を集めるようになると、母と妻が部屋貸しを始めました。そのことがきっかけで、ヨードの原料となるカジメに着目し、沃度灰の製造を開始します。米相場で無一文になった三郎助も家業を手伝い、三重から房総までカジメを買い付ける日々を送りました。弟の忠治も技術者として事業に貢献。日本のヨード業界で大きな勢力を持つようになりました。

業界の発展とともに、海外のダンピング攻勢や日露戦争による需要増など、様々な出来事がありました。鈴木は関東沃度同業組合を組織し、理事長に就任。その後、加瀬・棚橋と共同で日本化学工業を創立しましたが、経営方針の違いから専務を辞任し、再び独立します。

味の素の開発と成功

1908年、東京帝国大学の池田菊苗博士がグルタミン酸を主成分とする調味料を発明し、特許を取得。鈴木は池田博士と面会し、特許の実施契約を結びました。葉山の工場で調味料の工業化を進め、「味の素」として販売を開始します。しかし、当初は品質の問題や暴風雨による工場の損害など、困難の連続でした。

製造過程で生じる大量のデンプンに着目し、鐘淵紡績との提携を模索。最終的に鐘紡が味の素のデンプンを大量に購入することで、経営は大きく改善しました。1917年には株式会社鈴木商店を設立し、社長に就任しました。

「味の素の原料は蛇である」という風説が流れるなど、逆風もありましたが、新聞広告などの対策により、逆に知名度を高めることに成功しました。また、特許権の延長を政界に働きかけ、実現させました。

電力事業への進出

塩素酸カリウムの製造には大量の電力が必要なため、千曲川流域で水利権を持つ高橋保らとともに東信電気株式会社を設立し、水力発電事業に乗り出しました。森矗昶の協力を得て発電所を建設し、東京電燈への電力販売で莫大な利益を上げ、会社を大きく成長させました。

電力需要の創出のため、東京電燈と共同で昭和肥料株式会社を設立し、硫安と石灰窒素の製造を開始しました。

晩年

1927年、勲四等瑞宝章を授与されました。晩年は趣味に力を入れましたが、食道癌により1931年3月29日に63歳で亡くなりました。亡くなった日は、高輪本邸の棟上げの3日後であり、昭和肥料による初の国産硫安の製造に成功した日でもありました。遺言により、東信電気は弟の忠治に、味の素は長男の三郎に、昭和肥料は森矗昶に譲られました。

鈴木家の系譜

鈴木三郎助の名は、幕末の浦賀奉行中島三郎助にちなむとされています。父から子へと代々「鈴木三郎助」の名が受け継がれています。

初代：忠七・滝屋店主（1841年 - 1875年）
2代：泰介・鈴木商店創業者（1868年 - 1931年）
3代：三郎・鈴木商店3代目社長（1890年 - 1973年）
4代：重明・味の素専務取締役→相談役名誉会長（1909年 - 1998年）
* 5代：重利・味の素ヘルシーサプライ株式会社顧問（1948年 - 2015年）

もう一度検索