鈴木清 (写真家)

鈴木清：炭鉱と記憶を刻んだ写真家

鈴木清（1943年11月30日 - 2000年3月23日）は、福島県いわき市に生まれた日本の写真家です。彼の作品は、炭鉱という場所と、そこから生まれる人々の記憶や感情を、独自の視点で捉えたことで知られています。

生い立ちと写真への目覚め

鈴木清は、炭鉱で働く労働者として人生をスタートさせました。しかし、炭鉱の閉山を機に、漫画家を目指して上京。そこで、土門拳の写真集「筑豊のこどもたち」との出会いが、彼の人生を大きく変えることになります。写真の持つ力に魅せられた鈴木清は、東京綜合写真専門学校に入学し、写真家としての道を歩み始めました。

デビューと独自のスタイル

専門学校卒業後、鈴木清は「カメラ毎日」誌に「シリーズ・炭鉱の町」を発表し、写真家としてデビュー。その後も、炭鉱をテーマにした作品を撮り続けました。彼の作品は、単に炭鉱の風景を記録するだけでなく、そこに生きる人々の姿や、炭鉱という場所が持つ歴史や記憶を、深く掘り下げて表現しているのが特徴です。

写真家としての活動の傍ら、鈴木清は母校である東京綜合写真専門学校で講師を務めたり、看板描きをしたりしながら生計を立てていました。経済的に恵まれない状況の中、彼は生前8冊の写真集を出版しましたが、そのうち7冊は自費出版でした。写真集の制作では、撮影だけでなく、レイアウトや編集も自身で手掛け、独自の視点と美学を追求しました。

代表作「修羅の圏（たに）」

彼の代表作の一つとして知られるのが、写真集「修羅の圏（たに）」です。この作品では、出身地であるいわき市の炭鉱や、その閉山後の風景、再開発された常磐ハワイアンセンターなどを舞台に、自身の記憶や生い立ちを自伝的に見つめ直しています。写真集の題字は、親交のあった写真家ロバート・フランクが手掛けました。この作品を通して、鈴木清は写真というメディアを通じて、個人的な記憶と普遍的なテーマを繋ぎ合わせることに成功しました。

展示へのこだわり

鈴木清は、写真展の展示方法にも強いこだわりを持っていました。彼は、展示を行うギャラリーのミニチュアを作成し、そこで展示方法を検討するという独特なスタイルを持っていました。亡くなった後に行われた写真展では、彼が残した展示案をもとに、教え子の金村修が会場設営を担当しました。このエピソードからも、彼が写真表現だけでなく、展示空間全体を作品の一部として捉えていたことがわかります。

年譜

1943年：福島県いわき市に生まれる。
1969年：東京綜合写真専門学校卒業。「カメラ毎日」誌上の「シリーズ・炭鉱の町」でデビュー。
1983年：個展・写真集「天幕の街」で日本写真協会新人賞受賞。
1989年：写真集「夢の走り」で第1回・写真の会賞受賞。
1992年：個展「母の溟」で第17回・伊奈信男賞受賞。
1994年：個展・写真集「修羅の圏」で第14回・土門拳賞をそれぞれ受賞。
2000年：多臓器不全により逝去。

写真集

『流れの歌』（1972年）
『ブラーマンの光』（1976年）
『天幕の街』（1982年）
『夢の走り』（1988年）
「愚者の船」（IPC、1991年）
『天地戯場』（1992年）
「デュラスの領土〈DURASIA〉 マルグリット・デュラスのアジア。」（1998年）
『修羅の圏（たに）』（1994年）

回顧展

「鈴木清 写真展 百の階梯、千の来歴」（2010年、東京国立近代美術館）

関連事項

マルグリット・デュラス
コンポラ写真
Mole

外部リンク

公式Webサイト
鈴木清 (@guganphoto) - X（旧Twitter）
鈴木清 (kiyoshi.suzuki.1130) - Facebook

まとめ

鈴木清は、炭鉱という特定の場所を舞台に、自身の記憶と社会的な視点を融合させた写真家でした。自費出版で写真集を制作し、レイアウトや編集にもこだわり、独自の美学を追求しました。彼の作品は、個人的な経験が普遍的なテーマに繋がることを示唆し、後世の写真家たちに大きな影響を与えました。

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