鈴木行一

鈴木 行一（すずき ゆきかず）は、1954年2月11日に東京都で生を受けた、日本の重要な現代音楽作曲家であり、編曲家でもありました。2010年9月6日、惜しまれながら自宅で心不全のため急逝しました。

彼の音楽の道は、東京都立両国高等学校を経て、1975年に東京藝術大学音楽学部作曲科に入学したことから始まります。さらに学びを深めるため、1983年には同大学大学院作曲研究科の課程を終えました。作曲においては、原博、宍戸睦郎、尾高惇忠、松村禎三、そして黛敏郎といった錚々たる顔ぶれの指導を受けました。これらの師事経験が、彼の多角的な音楽スタイルの基盤を築いたと言えるでしょう。

早くからその才能は認められており、大学在学中の1978年には、権威ある第47回日本音楽コンクール作曲管弦楽部門で第1位に輝きました。翌1979年には、国際舞台においても評価を得て、UNESCO国際作曲家会議（IMC・パリ）にて第4位を受賞しています。

鈴木は、作曲活動だけでなく、幅広い音楽分野で貢献しました。大学で指導を受けた黛敏郎とは、卒業後も師のアシスタントとして活動を支えました。特に、テレビ番組『題名のない音楽会』においては、1981年以降、番組で演奏される管弦楽の編曲を数多く手がけ、クラシック音楽をより多くの聴衆に届ける役割を担いました。

また、教育者としても後進の育成に情熱を注ぎ、くらしき作陽大学で教授を務めました。指揮者としても活躍し、1976年からその生涯を閉じるまで、東京薬科大学ハルモニア管弦楽団の常任指揮者として楽団を率いました。演奏と教育の両面から音楽界に貢献したのです。

彼の創作活動は多岐にわたり、様々な編成のために数多くの作品を残しました。主要なジャンルとしては、管弦楽、吹奏楽、室内楽、器楽、声楽、合唱などが挙げられます。

管弦楽曲としては、日本音楽コンクール第1位受賞作である「管弦楽のためのクリマ」（1978年）をはじめ、「ピアノと管弦楽による交響的変容」（1980年）、「管弦楽のための頌歌」（1990年）、邦楽器を取り入れた「篳篥と管弦楽のための森と星々の河」（1992年）、「オカリナとオーケストラのための『輝ける生命の森』」（1994年）、能の素囃子を取り込んだ「『勧進帳』素囃子とオーケストラ・混声合唱のために」（2005年）などがあります。

吹奏楽曲では「闇の光彩 吹奏楽のために」（1996年）などが知られています。室内楽や器楽作品も数多く、「オーボエとピアノのためのソナタ」（1976年）、「コントラバスのためのクンダリーニ」（1981年）、「ピアノ五重奏曲」（1987年）、二つの弦楽四重奏曲（1999年、2000年）、「11人の打楽器奏者のための喜びの森」（2000年）、「ヴァイオリンとピアノの為のラ・フォリア〜凍れる月」（2001年）、「無伴奏ヴィオラのためのモノフォニー」（2006年）、そして逝去の年に完成された「ヴィオラとピアノのための響唱の森」（2009年）など、多様な編成による作品があります。NHK和楽団のための編曲作品も残しています。

声楽作品や合唱作品も手掛け、混声合唱組曲「美しいものについて」（1987年）や、草野心平の詩による「海の響」（1990年）、子供向けの合唱曲「家族」（1994年）など、幅広い層に向けた作品を生み出しました。

また、純粋なコンサート音楽のみならず、映像作品のための音楽も担当しました。映画ではドキュメンタリー「ヒロシマナガサキ 核戦争のもたらすもの」（1982年）や、伊丹十三監督作「大病人」（1993年、指揮指導）に関与。テレビドラマの音楽も複数手がけました。地域社会への貢献としては、いくつかの小学校の校歌作曲も行っています。

管弦楽編曲家としては、自身の師である黛敏郎のバレエ音楽「THE KABUKI」や、芥川也寸志の楽曲、さらには坂本龍一が手がけた世界陸上やバルセロナオリンピックの開会式音楽など、著名な作曲家の作品のオーケストラ編曲も行いました。シューベルトの歌曲集「冬の旅」をバリトンとオーケストラのために編曲するなど、古典作品にも新たな息吹を与えています。

私生活では、東京芸術大学作曲科出身で尾高惇忠に師事した作曲家、鈴木理恵子を妻に持ちました。

鈴木行一の音楽は、伝統的な技法と現代的な感性を融合させたものであり、その幅広い活動は日本の音楽界に大きな足跡を残しました。突然の逝去は惜しまれますが、彼が生み出した数々の作品や、育てた多くの後進たちによって、その功績は今後も語り継がれていくでしょう。

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