鉄兜団、前線兵士同盟

鉄兜団（鉄兜団、前線兵士同盟）

鉄兜団（てつかぶとだん、正式名称：鉄兜団、前線兵士同盟、ドイツ語: Stahlhelm, Bund der Frontsoldaten）は、第一次世界大戦後のドイツで台頭した、保守的な右翼在郷軍人組織です。ヴァイマル共和政の不安定な政治情勢の中で、反民主主義、反共和主義、反ヴェルサイユ条約を掲げ、多くの退役軍人から支持を集めました。

設立と急成長

1918年12月25日、退役軍人であるフランツ・ゼルテによってマクデブルクで設立されました。当初は2000人程度の規模でしたが、急速に拡大し、1924年には1万人、1928年には22万5000人、1931年には100万人を超える大組織へと成長しました。この急成長は、ヴァイマル共和政への国民の不満や、戦争で失われた秩序の回復への強い願望を反映していたと言えるでしょう。

政治活動と他の勢力との関係

鉄兜団は、ドイツ国家人民党(DNVP)と密接な関係を築き、同党の政治活動を支援しました。しかし、DNVPの一部分ではなく、あくまで独立した組織でした。ナチ党(NSDAP)とも一定の接点はありましたが、ナチ党の過激な反ユダヤ主義や社会主義的な経済政策には批判的で、両者の関係は複雑で一貫したものではありませんでした。街頭闘争といった過激な活動には関与せず、民間防衛隊としての役割を重視していた点が特徴です。

1929年にはDNVPと共にヤング案反対闘争に参加し、1931年にはDNVP、ナチス党などと共に「ハルツブルク戦線」を組織し、ヴァイマル共和政への批判を強めました。しかし、ヒトラーは鉄兜団をナチス党の下部組織として利用することを望まず、鉄兜団もナチスの過激なイデオロギーに反発する傾向が強まりました。結果として、ナチスとの同盟関係は解消し、鉄兜団はDNVPとの連携を維持することとなりました。

ナチス台頭と鉄兜団の終焉

1932年の大統領選挙では、鉄兜団とDNVPは統一候補を擁立しましたが敗北しました。1933年、ヒトラーが首相になると、鉄兜団の取り込みを試みました。しかし、鉄兜団指導部の拒否により、ゼルテが労働大臣として入閣する形となりました。

しかし、1933年6月21日、鉄兜団はナチス党の[突撃隊]に吸収され、ゼルテはSA大将に任じられました。鉄兜団は「国家社会主義ドイツ前線戦士連盟」と改名させられ、1935年には完全に解散させられました。これは、鉄兜団が持つ君主主義的な傾向をナチスが警戒したためだと考えられています。

戦後の再建と現代

1951年、鉄兜団はケルンで登録社団として再発足しました。戦後の西ドイツにおいても、極右やネオナチ勢力の一部は、鉄兜団のイデオロギーを受け継いでいます。組織名称は変更されつつも、現在も存在が確認されているものの、いくつかの地域支部は2011年に解散しています。

鉄兜団の出版物と派閥

鉄兜団は機関誌『Stahlhelm』を発行していました。また、鉄兜団内部には、団中央の保守的な姿勢に反発する若い世代も存在し、よりラディカルなナショナリズムを主張する『Standarte』という機関誌も発行されました。このグループは後に鉄兜団から分離し、他の右翼組織と連携しました。

まとめ

鉄兜団は、ヴァイマル共和政期における重要な右翼勢力の一つであり、その歴史は、ドイツの政治的混乱とナチスの台頭を理解する上で重要な要素となります。設立から解体、再建まで、その変遷は複雑で、現代にも影響を与え続けています。様々な勢力との複雑な関係性、そして内部における派閥争いなども含め、多角的な視点から考察する必要があります。 また、鉄兜団が発行した機関誌『Stahlhelm』や『Standarte』の内容も、その思想や活動を知る上で重要な手がかりとなります。

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