鉱油

鉱油の概要

鉱油（こうゆ、英: mineral oil）は、主に石油、天然ガス、石炭などから得られる炭化水素化合物の混合物を指します。これは、鉱物油や鉱物性油とも呼ばれ、工業製品などでの使用が一般的です。天然の動物性脂肪や植物油脂は鉱油には含まれません。

呼称の由来

鉱油という名称の起源は、石油がリンネの時代に鉱物として扱われていたことにあります。そのため、英語の“mineral”や漢字の「鉱」が採用されています。

潤滑油としての利用

潤滑油市場の90％以上を占める鉱油は、主に芳香族系、パラフィン系、ナフテン系の炭化水素から構成されています。これらの潤滑油は、粘度の範囲が広く、安価で手に入れやすいのが特徴です。特にパラフィン系の潤滑油は数多くの種類があり、粘度を一定の基準で評価されます。

一方で、鉱油は精製過程において不純物を完全に除去できないため、熱安定性が低く、流動点が高くなりがちです。そのため、一般的に-20℃程度で凍結し、合成油と比べると使用温度範囲が狭くなります。

パラフィン系とナフテン系の特徴

鉱油には、パラフィン系とナフテン系のタイプがあり、パラフィン系が潤滑油の主成分となっています。このタイプは、広範な沸点を持ち、粘度指数や引火点も高く、エンジンオイルなどに使用されます。

ナフテン系は、シクロアルカンを含むもので、低い流動点が特徴です。このため、冷凍機油や塗料の基材などに利用されます。特に、ナフテン系油は金属加工油やグリースの基剤としても重宝されます。

鉱油の歴史

鉱油は、紀元前から天然アスファルトが潤滑剤として使用されてきましたが、当時は石油資源が限定的であったため、広く普及することはありませんでした。17世紀に入ると、石油の掘削と精製が進み、重質油が潤滑油として注目されるようになりました。1845年にはアメリカで耐久性の高いカルシウムグリースが開発され、動植物油から鉱油への移行が加速しました。

20世紀には、フィッシャー・トロプシュ法やベルギウス法により、高度に精製された鉱油が生産されるようになり、化学合成油との境界がわかりにくくなっています。特に、自動車用のエンジンオイルなどでは、その定義や用途に関する議論が続いています。

燃料油としての鉱油

古くは、植物性や動物性の油脂も燃料として使われていた時代、ガソリンは特別な鉱油として扱われていました。これは日本のガソリンスタンドの名称にもその名残として現れています。

化粧品への応用

鉱油は、化粧品や医薬品などにも広く利用されています。日本薬局方で認定されている白色ワセリンはその代表例で、安価で安定した性質が求められる製品として多くの化粧品に使われています。

これからも鉱油の重要性は変わらず、多様な分野での利用が期待されます。

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