銀目廃止令

銀目廃止令について

銀目廃止令（ぎんめはいしれい）は、明治初期の1868年に発令された法令であり、旧幕府の幣制に基づく貨幣制度の変更を目的としました。この法令は「銀目停止令」とも呼ばれ、初めて新政府による本格的な通貨政策が示されたものとされています。

背景と経緯

発令前、日本は旧幕府の三貨制（銀・金・銅）を踏襲しており、1868年2月には新政府がこれを維持するとの方針を打ち出していました。旧幕府の通貨がいまだ流通している中、政治的な変革によりその扱いが問題視されていました。特に、鳥羽・伏見の戦い後において、経済界での信用制度の変化と新政府への信任が強く求められていたため、早期の対応が必要でした。

1868年（慶応4年）閏4月には、全ての金銀貨の考査が行われ結果が公表されましたが、同年5月9日に発令された銀目廃止令によって、従来の銀目による貸借契約は金や銭に換算され、新たな基準が設けられました。この法律により、銀目での貸借は不可能となり、流通していた丁銀や豆板銀も禁止されることになりました。さらに、明治4年（1871年）には新貨条例が施行され、金本位制へ移行しましたが、貿易用の銀貨については一定の流通が認められました。

発令の目的

銀目廃止令が発令された目的は複数あります。主な目的としては、新政府が発行する太政官札の流通を円滑に進めること、複雑な通貨制度を整理すること、そして計算貨幣の統一化が挙げられます。特に、商人たちが発行していた私札の流通を制限することで、政府の財政政策を強化する狙いがあったと考えられています。

また、この政策は新政府が商人からの会計基立金集めを試みる一環とされ、当初は大坂の商人たちがあまり協力的でなかったため、政府への意趣返しとも位置付けられました。この背景には、経済界における既存の力関係が反映されていた可能性もあります。

発令後の影響

銀目廃止令の発令後、商人たちの経済活動に与えた影響は甚大でした。特に、銀目表記の手形の流通が無効とされたことで、大坂を中心とする信用ネットワークの混乱が生じました。商人たちは急に現金と交換を求めて両替屋に押しかけましたが、両替屋にはその手形を現金化するだけの現銀残高が不足していました。このため、取り付け騒ぎが発生し、多くの両替商が軒並み閉業へと追い込まれ、経済的な混乱を招く結果となったのです。

さらに、廃止令は単に貨幣制度の変革だけでなく、政治社会体制の影響も及ぼしました。新政府はその混乱を最小限に食い止めるよう急速に対策を講じ、時期と手法が重要な意味を持つこととなりました。ただ一方で、銀目の廃止がもたらした混乱については、既に進行していた計数化や空位化の一環として捉え、実際の影響は過大評価されているとの見解も存在します。

結論

銀目廃止令は日本の貨幣制度における重要な転機であり、明治政府による経済の近代化に向けた第一歩でした。この法令を通じて、古い体制から新しい制度への移行が進められ、国の経済基盤に大きな変化がもたらされたのです。

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