鋼鉄の騎士 (小説)

鋼鉄の騎士

『鋼鉄の騎士』は、作家・藤田宜永が1994年に発表した長編小説です。新潮ミステリー倶楽部の書き下ろし作品として刊行され、翌年には第48回日本推理作家協会賞（長編部門）を受賞。『このミステリーがすごい! '96年版』でも第2位に選ばれるなど、高い評価を得ました。

単行本は上下2段組みで800ページを超えるという、当時としても異例のボリュームを誇ります。作者のあとがきによると、作中に登場するグランプリレースは、実際に行われたレースの日時と場所が忠実に再現されているとのことです。続編として『廃墟の騎士』が執筆されましたが、雑誌連載が中断したまま作者が死去したため、未完となりました。

あらすじ

物語の舞台は、1930年代後半のパリ。左翼運動に挫折した日本人青年・千代延義正は、陸軍軍人である父の赴任に伴い、フランスへと渡ります。無気力な日々を送る義正でしたが、父の友人と共にトリポリのグランプリレースを観戦したことをきっかけに、眠っていた情熱を呼び覚まします。カーレーサーになることを決意した義正は、激動の時代の中で夢を追い求めます。第二次世界大戦前夜の不穏な空気が漂うヨーロッパを舞台に、若者の情熱と諜報戦が複雑に絡み合い、物語は予想外の展開を見せていきます。1938年4月に南仏ポーで行われる決勝レース当日までの、4年間の軌跡を描いた壮大な歴史小説です。

主な登場人物

千代延義正: 千代延子爵家の次男。左翼運動に挫折後、フランスへ。
千代延義親: 義正の兄。
千代延宗平: 義親・義正兄弟の父。帝国陸軍フランス駐在武官。
千代延寿子: 宗平の妻。義親・義正兄弟の母。
北島恭子: 千代延家の女中。
有馬正二: 有馬家の次男。左翼運動時代の義正の先輩。
有馬小百合: 正二の腹違いの妹。
須崎進太郎: ホテル"ネアン"の経営者。
ゲーリー水島: アメリカ在住の骨董商。
高石三郎: パリ在住の遊民。
シャルル・ド・トゥルニエ伯爵: 千代延宗平の友人。
アルド・ベルニーニ: イタリア人レーサー。
ギィ・ディアメル: フリージャーナリスト。
ジェルメール・ブルグラン: 帝国陸軍武官室秘書。
セルジュ・ゴテック: 自動車修理工場の経営者。
ジャン・ルイ・ゴテック: その息子。父親の工場で働く。
マルセル・カシニョール: ERAを操る初老のドライバー。
クラウス・シュミット: ドイツ人レーサー。
エリカ・グッドマン: ユダヤ系科学者。
弓王子: パリの盗賊団の首魁。
ドンジョン: 弓王子の情婦。
ニコライ・ブルガーコフ: ツァーリ軍人会会長。
フィヨドール・プーシキン: ツァーリ軍人会書記。

作中に登場する主なレースカー

ブガッティ
ERA
ドラエ
メルセデス
アウトユニオン
アルファロメオ
マセラティ

書籍情報

1994年11月 四六上製本 新潮社
1998年1月 (上下巻) 新潮文庫
2009年6月 (日本推理作家協会賞受賞作全集 78.79巻) 解説/細谷正充 双葉文庫

未完の続編

『廃墟の騎士』2004年8月～2007年3月「小説新潮」連載 新潮社

関連項目

プリンス・ビラ
ヨーロッパ・ドライバーズ選手権
1935年のグランプリ・シーズン
1936年のグランプリ・シーズン
1937年のグランプリ・シーズン
1938年のグランプリ・シーズン

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