浄智寺
浄智寺は、神奈川県鎌倉市にある臨済宗円覚寺派の寺院で、鎌倉五山の第四位に位置づけられています。山号は金宝山で、本尊は過去・現在・未来を象徴する阿弥陀如来、釈迦如来、弥勒如来の三世仏です。境内全体が「浄智寺境内」として国の史跡に指定されており、その歴史的価値は高く評価されています。
浄智寺は、鎌倉幕府の第5代執権・北条時頼の三男、北条宗政の菩提を弔うために弘安4年（1281年）に創建されました。開基は宗政の子である北条師時とされていますが、当時師時はわずか8歳であったため、実際には宗政の妻と兄である北条時宗が創建を主導したと考えられています。開山には日本人僧の南州宏海が迎えられましたが、彼は尊敬する中国の高僧、兀庵普寧を開山とし、自身は準開山となりました。
創建後、浄智寺は高峰顕日や夢窓疎石といった名僧が住持を務め、最盛期には七堂伽藍を備え、塔頭も11寺院を数えるほどでした。元亨3年（1323年）の記録によると、北条貞時の十三回忌には浄智寺から224人もの僧侶が参加しており、当時の寺の規模の大きさが伺えます。発掘調査の結果、寺域は現在の円覚寺に匹敵するほどの広さであったと推測されています。
鎌倉幕府滅亡後も浄智寺の勢いは衰えず、室町時代には再び諸堂が建ち並びました。上杉禅秀の乱後、足利持氏が鎌倉に戻った際には、まず浄智寺に2ヶ月以上滞在したという記録も残っています。しかし、15世紀半ば頃から鎌倉の都市としての衰退とともに徐々に荒廃し、大正12年（1923年）の関東大震災で多くの建物が倒壊しました。現在の伽藍は、主に昭和になってから復興されたものです。
浄智寺は、東慶寺の東、建長寺の西南に位置する谷戸にあります。参道は鎌倉石で舗装されており、独特の風情を醸し出しています。重層一間一戸の鐘楼門は、上層が鐘楼を兼ねる珍しい形式で、花頭窓をあしらった中国風のデザインが特徴的です。門をくぐると、本尊の三世仏を安置する曇華殿（仏殿）があります。
境内は樹木が豊かで竹林も広がり、起伏に富んだ地形が特徴です。崖のような場所には、鎌倉地域特有の横穴である「やぐら」が多数見られ、中には石仏や石塔が安置されています。また、鎌倉江ノ島七福神の一つである布袋像や、観音像を祀るやぐらも存在します。本堂裏の墓地には、作家の澁澤龍彦の墓があります。
境内の入り口にある湧き水は、鎌倉十井の一つである「甘露の井」として知られています。さらに、寺の裏山からは源氏山へと抜けられる道があり、ハイキングコースとしても人気があります。
山門: 扁額「寶所在近」は、円覚寺開山の無学祖元の筆とされています。
甘露の井: 山門前の太鼓橋の側に位置し、鎌倉十井の一つです。
鐘楼門: 2007年に再建されました。神奈川県指定有形文化財の銅鐘があります。
仏殿（本堂）: 雲華殿とも呼ばれ、本尊の木造三世仏坐像が安置されています。後方には鎌倉三十三観音の一つである観音菩薩像が祀られています。
書院: 1924年（大正13年）に建立された茅葺の建物です。
茶室
浄智寺の開山である南州宏海禅師の法系は、「宗覚派」として知られています。この法系には、以下のような禅師が名を連ねています。
(南州下)
兀庵普寧禅師（大宋特賜 宗覚禅師・建長寺第二世）
南州宏海禅師（浄智寺開山）
天外志高禅師（円覚寺住持）
(東巌下)
兀庵普寧禅師（大宋特賜 宗覚禅師・建長寺第二世）
東巌慧安禅師（勅諡 宏覚禅師・正傳寺開山）
法位円性禅師（正傳寺住持）
在庵円有禅師（福海寺開山・正傳寺住持）
無價掌珍禅師（京都萬寿寺住持・筑前聖福寺住持・福海寺住持）
汝舟川方禅師（南禅寺住持・福海寺住持）
吉州川祥禅師（天龍寺住持・福海寺住持）
蔵春禅厚禅師（願成寺住持・福海寺住持）
月窓興修禅師（萬寿寺住持・福海寺住持）
浄智寺には、数多くの文化財が所蔵されています。以下に主なものを紹介します。
重要文化財
彫刻: 木造地蔵菩薩坐像（鎌倉時代後期、鎌倉国宝館寄託）
古文書: 紙本墨書西来庵修造勧進状（永正13年、鎌倉国宝館寄託）
国の史跡: 浄智寺境内（1966年指定）
神奈川県指定文化財
彫刻: 木造三世仏坐像 三軀（室町時代中期）
工芸: 銅鐘（暦応三年）
鎌倉市指定文化財
絵画: 紙本墨画 白描菩薩図像 1幅
彫刻: 木造 韋駄天立像（室町時代前期、鎌倉国宝館寄託）、木造 聖観音菩薩立像
工芸: 木造 今上牌 1基
天然記念物: コウヤマキ 1株、タチヒガン 2株、ビャクシン 3株
その他寺宝
木造達磨大師像（14世紀から15世紀頃）
木造大休正念像（14世紀頃）
木造南州宏梅像（14世紀から15世紀頃）
木造観音菩薩立像（南北朝時代）
楞伽院：竺仙梵僊が建立した寺。
* JR横須賀線 北[[鎌倉駅]]から徒歩約10分。
浄智寺は、歴史的な建造物や美しい自然景観、貴重な文化財が調和した、魅力あふれる寺院です。鎌倉を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。
歴史
浄智寺は、鎌倉幕府の第5代執権・北条時頼の三男、北条宗政の菩提を弔うために弘安4年（1281年）に創建されました。開基は宗政の子である北条師時とされていますが、当時師時はわずか8歳であったため、実際には宗政の妻と兄である北条時宗が創建を主導したと考えられています。開山には日本人僧の南州宏海が迎えられましたが、彼は尊敬する中国の高僧、兀庵普寧を開山とし、自身は準開山となりました。
創建後、浄智寺は高峰顕日や夢窓疎石といった名僧が住持を務め、最盛期には七堂伽藍を備え、塔頭も11寺院を数えるほどでした。元亨3年（1323年）の記録によると、北条貞時の十三回忌には浄智寺から224人もの僧侶が参加しており、当時の寺の規模の大きさが伺えます。発掘調査の結果、寺域は現在の円覚寺に匹敵するほどの広さであったと推測されています。
鎌倉幕府滅亡後も浄智寺の勢いは衰えず、室町時代には再び諸堂が建ち並びました。上杉禅秀の乱後、足利持氏が鎌倉に戻った際には、まず浄智寺に2ヶ月以上滞在したという記録も残っています。しかし、15世紀半ば頃から鎌倉の都市としての衰退とともに徐々に荒廃し、大正12年（1923年）の関東大震災で多くの建物が倒壊しました。現在の伽藍は、主に昭和になってから復興されたものです。
境内
浄智寺は、東慶寺の東、建長寺の西南に位置する谷戸にあります。参道は鎌倉石で舗装されており、独特の風情を醸し出しています。重層一間一戸の鐘楼門は、上層が鐘楼を兼ねる珍しい形式で、花頭窓をあしらった中国風のデザインが特徴的です。門をくぐると、本尊の三世仏を安置する曇華殿（仏殿）があります。
境内は樹木が豊かで竹林も広がり、起伏に富んだ地形が特徴です。崖のような場所には、鎌倉地域特有の横穴である「やぐら」が多数見られ、中には石仏や石塔が安置されています。また、鎌倉江ノ島七福神の一つである布袋像や、観音像を祀るやぐらも存在します。本堂裏の墓地には、作家の澁澤龍彦の墓があります。
境内の入り口にある湧き水は、鎌倉十井の一つである「甘露の井」として知られています。さらに、寺の裏山からは源氏山へと抜けられる道があり、ハイキングコースとしても人気があります。
建物
山門: 扁額「寶所在近」は、円覚寺開山の無学祖元の筆とされています。
甘露の井: 山門前の太鼓橋の側に位置し、鎌倉十井の一つです。
鐘楼門: 2007年に再建されました。神奈川県指定有形文化財の銅鐘があります。
仏殿（本堂）: 雲華殿とも呼ばれ、本尊の木造三世仏坐像が安置されています。後方には鎌倉三十三観音の一つである観音菩薩像が祀られています。
書院: 1924年（大正13年）に建立された茅葺の建物です。
茶室
南州宏海禅師の法系「宗覚派」
浄智寺の開山である南州宏海禅師の法系は、「宗覚派」として知られています。この法系には、以下のような禅師が名を連ねています。
(南州下)
兀庵普寧禅師（大宋特賜 宗覚禅師・建長寺第二世）
南州宏海禅師（浄智寺開山）
天外志高禅師（円覚寺住持）
(東巌下)
兀庵普寧禅師（大宋特賜 宗覚禅師・建長寺第二世）
東巌慧安禅師（勅諡 宏覚禅師・正傳寺開山）
法位円性禅師（正傳寺住持）
在庵円有禅師（福海寺開山・正傳寺住持）
無價掌珍禅師（京都萬寿寺住持・筑前聖福寺住持・福海寺住持）
汝舟川方禅師（南禅寺住持・福海寺住持）
吉州川祥禅師（天龍寺住持・福海寺住持）
蔵春禅厚禅師（願成寺住持・福海寺住持）
月窓興修禅師（萬寿寺住持・福海寺住持）
文化財
浄智寺には、数多くの文化財が所蔵されています。以下に主なものを紹介します。
重要文化財
彫刻: 木造地蔵菩薩坐像（鎌倉時代後期、鎌倉国宝館寄託）
古文書: 紙本墨書西来庵修造勧進状（永正13年、鎌倉国宝館寄託）
国の史跡: 浄智寺境内（1966年指定）
神奈川県指定文化財
彫刻: 木造三世仏坐像 三軀（室町時代中期）
工芸: 銅鐘（暦応三年）
鎌倉市指定文化財
絵画: 紙本墨画 白描菩薩図像 1幅
彫刻: 木造 韋駄天立像（室町時代前期、鎌倉国宝館寄託）、木造 聖観音菩薩立像
工芸: 木造 今上牌 1基
天然記念物: コウヤマキ 1株、タチヒガン 2株、ビャクシン 3株
その他寺宝
木造達磨大師像（14世紀から15世紀頃）
木造大休正念像（14世紀頃）
木造南州宏梅像（14世紀から15世紀頃）
木造観音菩薩立像（南北朝時代）
かつてあった塔頭
楞伽院：竺仙梵僊が建立した寺。
交通アクセス
* JR横須賀線 北[[鎌倉駅]]から徒歩約10分。
浄智寺は、歴史的な建造物や美しい自然景観、貴重な文化財が調和した、魅力あふれる寺院です。鎌倉を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。
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