長井道利

長井道利：斎藤三代の重臣、美濃国の戦国武将

長井道利は、戦国時代の美濃国を舞台に活躍した武将です。斎藤氏に仕え、中濃・北濃地方を掌握した有力な家臣として知られています。斎藤道三、義龍、龍興と、斎藤家三代の主君に仕えたことから、その生涯はまさに戦国時代の激動を反映したものと言えるでしょう。

出自と生い立ち

道利の出自については諸説あり、確かなところは分かっていません。斎藤道三の庶子、もしくは弟とする説や、長井氏という名家の出身とする説などがあり、現在も研究が続けられています。大永元年（1521年）の生まれと推定されており、若年期は竹ヶ鼻城で過ごしたとされています。

斎藤家の内紛と義龍への接近

斎藤道三と子の義龍の間で内紛が勃発すると、道利は義龍へと接近します。弘治元年（1555年）11月、道三の寵愛する義龍の異母弟らを暗殺する策を提案し、実行に及んだとされています。この決断は、道利の将来を大きく左右する転換点となりました。その後、長良川の戦いでは義龍と共に道三を討ち、義龍が可児郡の明智氏を滅ぼすと、明智庄の代官に任命されています。

中濃・北濃の支配と諸勢力との関係

義龍の死後、織田信長の美濃侵攻が始まりました。この混乱の中、道利は斎藤龍興と和睦し、中濃・北濃地方の支配を維持しました。一方で、武田信玄とも密接な関係を築き、書状のやり取りを通して、軍事的な協力関係にあったと推測されます。信玄からの書状には、織田信長が墨俣で長期にわたって戦闘を展開した場合、斎藤氏に加勢するという内容が記されています。これは道利が、斎藤家だけでなく、周辺勢力との巧みな外交によって勢力を維持していたことを示しています。

また、永禄5年（1561年）には八幡城の城主遠藤盛数の死後、その未亡人(慶隆の母)と結婚し、跡取りの慶隆の後見人となりました。これは、道利の政治的な影響力が、斎藤家臣の範囲を超えて広がりつつあったことを示しています。永禄7年（1564年）の稲葉山城の攻防においても、慶隆を保護し、八幡城を取り戻すために尽力しました。

織田信長との対立と最期

織田信長の勢力が拡大すると、道利は信長と対立することになります。永禄8年（1565年）夏の鵜沼城の戦いでは、木下秀吉を攻撃しますが敗退。その後も抵抗を続けましたが、永禄10年（1567年）に稲葉山城が陥落すると、龍興と共に伊勢へ逃れました。その後も長島一向一揆に加勢するなど、信長と敵対し続けました。元亀2年（1571年）、白井河原の戦いにおいて足利義昭の命を受けた和田惟政を援護する最中、三田傳助に討たれ、51歳で生涯を終えたとされています。ただし、道利の最期については、越前刀根山で龍興と共に戦死したとする説や、稲葉山城陥落以前に既に死去したとする説など、複数の説が存在します。

道利の評価

長井道利は、斎藤氏三代に仕えた重臣として、美濃国の戦国時代を生き抜いた武将です。複雑な政治状況の中で、巧みな外交と軍事力によって勢力を維持し、周辺勢力との関係を構築しました。その生涯は、数々の謎と異説に彩られていますが、戦国時代の武将として重要な役割を果たしたことは間違いありません。彼の行動や決断は、今日の歴史研究においても、多くの議論を呼び続けています。

参考文献

太田成和 編『郡上八幡町史』
関市教育委員会 編『関市史』
東京帝国大学 編『大日本史料』
横山住雄『武田信玄と快川和尚』
横山住雄『斎藤道三と義龍・龍興』
『寛政重修諸家譜』

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