長尾房清

長尾房清（ながお ふさきよ）は、戦国時代に関東で活動した武将です。犬懸長尾氏の一員として、主に山内上杉家に家臣として仕えました。

出自と名乗り

長尾実景の三男として生まれた房清は、通称を六郎と称しました。後に出家して道存と名乗ることもありました。

「房清」という名は、次兄の景人が臣従していた縁により、当時の関東管領であり山内上杉家当主であった上杉房顕から偏諱（諱の一字）を受けて名乗ったものです。その後、犬懸長尾家を継承するにあたり、名を憲景（のりかげ）と改めたと伝えられています。

家督後見と動乱への関与

文明7年（1475年）、犬懸長尾家の嫡流であった甥の定景が急逝するという出来事がありました。後継者には定景の弟である景長が据えられましたが、まだ幼かったため、房清がその後見役を務めることとなりました。

しかし、翌文明8年（1476年）に発生した長尾景春の乱では、房清は衝撃的な行動に出ます。この乱は山内・扇谷両上杉家と長尾氏内部の複雑な対立が原因で起こりましたが、房清は後見を務める立場でありながら、主家である山内上杉家当主の上杉顕定に敵対し、反乱の中心人物である長尾景春に味方したのです。この事実は、当時の情勢を詳しく記した太田道灌の『太田道灌状』にも「長尾六郎」（房清の通称）として明確に記されており、彼の裏切り行為は当時広く知られていたことがうかがえます。

さらに、長享元年（1487年）11月に勃発した長享の乱では、房清は再び山内上杉家から離反します。この乱は山内上杉家と扇谷上杉家の全面的な武力衝突へと発展しましたが、房清は敵対する扇谷上杉家当主の上杉定正に通謀しました。これにより、房清が拠点としていた下野国勧農城は、山内上杉家の上杉顕定による攻撃を受けることとなりました。

明応4年（1495年）には、上野国金山城主の岩松尚純と、その有力家老である横瀬成繁との間で争いが生じました。この争いにおいて、房清は足利勢を率いて出陣し、岩松氏を支援する形で介入しています。この行動は、房清が単なる山内上杉家の家臣というだけでなく、犬懸長尾氏、あるいはそれに連なる勢力として、独自の判断で地域の紛争に関与する影響力を持っていたことを示しています。

最期に関する諸説

房清の晩年や正確な没年については諸説あり、確定していません。一説には、永正元年（1504年）に山内・扇谷両上杉家が激突した立河原の戦いで戦死したと伝えられています。しかし、この時期には房清が既に亡くなっていた可能性を指摘する説もあり、立河原で戦死したとされる人物は、房清自身ではなく、その息子である可能性も示唆されています。そのため、彼の生涯の終焉については、今後の研究によってより詳細な事実が明らかになることが期待されます。

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