長崎聖堂

長崎聖堂（中島聖堂）とは

長崎聖堂は、現在の長崎市内に存在した孔子廟で、立山書院、中島聖堂とも呼ばれていました。この場所は、唐通事などの語学を指導する唐音勤学会が置かれ、一般の聴講も許された月次講釈が開かれるなど、長崎における官学の拠点としての役割を果たしました。伊東巳代治もここで漢学を学んだとされています。

長崎聖堂の歴史

創建

1647年（正保4年）、儒学者の向井元升が長崎奉行の馬場利重に願い出て、東上町に聖堂学舎を建立したのが始まりです。元升自らが塾師となり儒学を講じたことで、キリシタン禁教後の長崎において、儒学が大いに盛んになるきっかけとなりました。当時は立山書院と呼ばれていました。

一時中断と再興

1658年（明暦4年）に元升が京都へ去った後、一時中断しましたが、1663年（寛文3年）の寛文長崎大火で聖堂・学寮ともに焼失してしまいます。
1676年（延宝4年）に長崎奉行の牛込忠左衛門によって再興され、京都の儒者・南部草寿を塾師に招き、往時の賑わいを取り戻しました。しかし、草寿が士官のため越中へ赴いたことで、再び主宰のいない時期が続きます。

向井氏による世襲

1680年（延宝8年）、元升の三男である向井元成が草寿の後を継いで祭主となり、以後、向井氏が祭主を世襲し、書物改役にも任じられるようになりました。

移転と発展

1710年（宝永7年）には、敷地が手狭になったため、伊勢町にあった旧鋳銭所の跡地に移転。翌1711年（正徳元年）に遷座し、この時から長崎聖堂と称するようになりました。一般には中島聖堂と呼ばれていました。この頃の聖堂は、聖廟、明倫堂（講堂）、学寮、書庫などから構成され、長崎における儒学の中心としての役割を確立しました。

1712年（正徳2年）からは、唐人たちからの請願により、毎年釈菜拝礼の儀を行うことが許可されました。1716年（享保元年）には唐音勤学会が始まり、唐通事の育成にも貢献しました。

江戸時代後期の長崎聖堂

1736年（元文元年）から釈菜は毎年2月21日に挙行され、費用は長崎会所から支給されるようになりました。また、来航唐人が参詣する慣例となり、献上品を納めることが定められました。聖堂の収入源の一つとして、唐船からの砂糖の献上があったことが記録されています。

明治維新後の長崎聖堂

1859年（安政6年）に聖堂は教授所、書物改役は教授役と改称されました。1867年（慶応3年）には、長崎の地役人の改革が行われ、向井家の受用銀が廃止される代わりに、新たな支給が行われることになりました。明治維新後、1868年（明治元年）に教授所は広運館の漢学局となり、その後、国学局に合併。1871年（明治4年）には聖堂関係の役職が全廃されました。長崎聖堂の建物や記念碑、祭具・文書類は長崎県教育会に引き継がれ、後に長崎市教育委員会に寄贈されました。

歴代祭主

初代 - 向井元升以順（1647年 - 万治元年）
2代 - 向井元成兼丸（延宝8年 - 享保10年）
3代 - 向井文平兼命（享保11年 - 同2年）
4代 - 向井元仲兼般（享保3年 - 明和2年）
* 5代 - 向井齋宮延美（明和3年 - ）

遺構

1959年（昭和34年）には、聖堂にあった杏檀門が長崎市内の興福寺に移築されています。これは、長崎聖堂の数少ない遺構として、その歴史を今に伝えています。

長崎聖堂は、江戸時代の長崎における学問の中心地として、重要な役割を果たしました。その歴史は、長崎の文化や教育の発展を語る上で欠かせない要素となっています。

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