長幡部神社 (常陸太田市)

長幡部神社の概要

長幡部神社（ながはたべじんじゃ）は、茨城県常陸太田市に位置する古社で、その歴史は長いものです。この神社は式内社であり、かつての社格は郷社に相当します。神社の祭神には、綺日女命（かむはたひめのみこと）と多弖命（たてのみこと）が祀られており、いずれも『常陸国風土記』に登場する長幡部一族の祖神として崇められています。

長幡部について

社名に見られる「長幡」は、絹織物の一種である「絁（あしぎぬ）」を指します。この「長幡部」とは、絁を織る技術者たちの集団を意味しており、歴史的には皇別氏族や渡来系氏族が関与していたとされています。『新撰姓氏録』の逸文では、長幡部の祖は「七姓漢人」の中に含まれる皀（こう）姓であるとされており、その末裔には佐波多村主が名を連ねています。また、『古事記』の開化天皇の段には、開化天皇の第三皇子である日子坐王の子、神大根王が長幡部氏の祖であり、岐阜の本巣国造と親族であるとの伝説も残されています。

創建の歴史

長幡部神社の創建に関する記録は、『常陸国風土記』の久慈郡に記載があり、ここには長幡部の社が由来する逸話が語られています。珠売美万命が天から降臨した際、綺日女命が従い日向から美濃へ向かったという伝説が伝わっています。また、崇神天皇の時代に、長幡部の遠祖である多弖命が美濃から久慈へ遷り、最初の織機を建てたとのことです。神社は幡山古墳群の中に位置しており、この古墳群は長幡部の祭祀氏族と関連が深いと考えられています。

祭神と神階

長幡部神社は仁寿元年（851年）に正六位上を受け、その後も10度の贈位を経て、明応10年（1501年）には正三位まで昇格しました。平安時代中期の『延喜式神名帳』にも、「常陸国久慈郡 長幡部神社」として記載されており、式内社の一つとして重要視されています。この神社の存在は、常陸国との関係においても多くの文献に登場します。

歴史の変化

康平年間（1058年-1065年）には、源頼義が奥羽へ出兵する際に戎旗を奉納し、戦勝を祈願したとされています。その後、凱旋した際に鹿島、三島、神明、若宮の四所明神を勧請し、これが影響して神社の名称が「鹿島明神」として知られるようになりました。中世以降には「小幡足明神」、さらに「駒形神社」と呼称される時期もありましたが、延享年間（1744年-1748年）には「長幡部神社」としての名を復活させています。明治6年（1873年）には近代社格制度に基づき郷社に列せられました。

現在の神社

長幡部神社の旧宮跡は神社から北西約700メートルの位置にあり、神輿が出る際には必ずここに安置される慣習があります。神社周辺には幡山古墳群があり、数々の副葬品が出土しており、これは神社を奉斎した氏族との深い関係を示唆しています。神社における祭事には、元旦祭（1月1日）、祈年祭（2月20日）、春例祭（4月9日）、秋季祭（旧暦9月29日）、新嘗祭（11月30日）などがあり、地域の人々に親しまれています。

アクセス情報

長幡部神社は茨城県常陸太田市幡町539に位置しており、訪れる際には周辺の幡山古墳群もぜひ見学してみてください。神社の歴史と文化を通じて、日本の古代に思いを馳せることができる貴重な場所です。

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