長徳の変

長徳の変について

長徳の変（ちょうとくのへん）は平安時代中期に発生した重要な政変です。この出来事は996年に、内大臣である藤原伊周と権中納言の藤原隆家兄弟が花山法皇に対して行った不敬な事件をきっかけに、兄弟が失脚し中関白家が没落することとなる一因となりました。この事件は、花山院闘乱事件とも呼ばれています。

事件の経緯

藤原伊周は、故関白である藤原道隆の嫡男で、故太政大臣藤原為光の娘である三の君と関係を持っていました。その一方で、花山法皇が三の君の姉妹にあたる四の君とも関係を築き始めます。この錯綜した人間関係の中で、伊周は法皇が自分の愛人である三の君に通っていると誤解し、弟の隆家に相談を持ちかけました。

1996年の1月16日、隆家は従者の武士を使って法皇を弓で射るという事件を引き起こします。この矢は法皇の袖に当たり、法皇は無力なまま御所に戻らざるを得ませんでした。この一連の事件は、法皇の従者の二人が命を落とし、その首が持ち去られるというさらなる凶行を伴いました。

この一連の事件について、花山法皇は女性問題が発端であることから、当初は朝廷に訴えることを躊躇しました。しかし、事態はすぐに広まり、一条天皇や藤原道長にも知られることとなります。道長は事件を深く掘り下げる姿勢を見せ、手紙で情報を得ることとなります。特に、兄妹たちの間に密告があったと考えられており、頭中将の藤原斉信が道長に事件を告げたという説も存在します。

処分とその影響

事件の風評は広まり続け、伊周と隆家は次第に公の場に出ることが難しくなっていきます。2月5日には伊周の家司の邸宅が捜索され、数日後には一条天皇からの指示が道長に伝えられ、伊周と隆家の処分を決定するよう指示されます。

また、この時期には花山法皇の母后が病に倒れ、その原因として呪詛が噂されるなど、社会は不穏な気配を帯びます。さらに、伊周が大元帥法を行使していたことが密告され、ますます処罰の流れは止まらなくなります。

最終的に、4月下旬には伊周が大宰権帥、隆家が出雲権守に左遷され、彼らは失脚することになります。また、この事変に際して、伊周と隆家の姉である中宮・藤原定子も出家するという新たな動きが見られました。

歴史的意義と後影響

長徳の変は、藤原氏内部の権力闘争の一環であったことが特徴的です。これまでの政治的陰謀とは異なり、この事件は伊周と隆家の不誠実な行動によって招かれたものでした。事の経緯を巡っては、かつての藤原道長が無実の罪を着せたとの説もありますが、多くの研究者はこの説には信憑性がないと考えています。

この政変から150年後に起こる保元の乱では、「死罪の復活」が話題に上がる中、長徳の変がその背景にあると指摘されることもあります。このように、長徳の変は平安時代の政局において大きな影響を及ぼし、藤原氏の変遷に重要な影響を与えました。

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