長町-利府線

長町-利府線断層：仙台平野を横切る地殻変動の痕跡

宮城県仙台市近郊を南北に走る長町-利府線断層は、総延長約17キロメートルに及ぶ活断層です。別名、長町-利府断層とも呼ばれ、仙台平野の西縁に位置し、北東から南西方向へ、仙台市街地を横断しています。地質学的な調査から、この断層は過去に正断層として活動した後、現在では逆断層として活動していることが分かっています。その活動は、現在も続いている可能性があり、地震発生との関連性も指摘されています。

断層の位置と地形的特徴

断層の北東端は松島湾近くの松島丘陵にあり、南西端は仙台市南部、名取川の左岸付近まで達します。断層の南東側は海岸まで続く低地が広がっていますが、北西側は帯状に褶曲し隆起しているのが特徴です。この隆起帯は「宮城野褶曲線」と呼ばれています。断層自体は沖積層に埋もれており、地表には露頭していませんが、榴ヶ岡と大年寺山の南東麓を結ぶ線が、仙台市域における長町-利府線の地上延長と推定されています。この線は、市街中心部を構成する河成段丘と、一段低い沖積平野の境界線とも一致しています。断層は北西側に斜めに潜り込んでいるため、地形上の線よりもやや北西側が断層の真上にあたると考えられています。

形成史：正断層から逆断層への変遷

長町-利府線断層は、地質年代を通して異なる時期に逆方向の動きを示したと推定されています。数百万年前、日本海拡大の終期頃には、引っ張りによって生じる正断層として活動していました。しかし、数十万年前からは圧縮力によって逆断層に転じ、現在まで継続的に活動していると考えられています。正断層から逆断層へのこのような活動様式の転換は、東北地方では比較的多く見られる現象です。

中新世と第四紀の活動

中新世初期には、松島丘陵付近で北西側が低くなるような正断層運動が起きていました。一方、第四紀（鮮新世以降）には、北西側と南東側から圧縮力がかかり、北西側が隆起する逆断層運動に転じました。この逆断層運動は約45万年前頃に開始されたと推定されており、仙台市周辺の河岸段丘（青葉山丘陵、台ノ原段丘、上町段丘、中町段丘、下町段丘）の形成と同時進行で起こったと考えられています。この隆起運動によって、榴ヶ岡、大年寺山、緑が丘北半部、三神峯などが形成されました。隆起の規模は幅約1キロメートル、長さ約10キロメートルに及び、最大垂直変位量は82メートル以上と推定されています。年平均変位量は約0.8mmです。

歴史地震との関連性

地層の分析からは、長町-利府線断層の最新の活動時期は紀元前380年から紀元前200年以降と推定されています。また、1736年に仙台で発生した地震との関連性も指摘されており、断層活動との因果関係について更なる研究が必要です。

まとめ

長町-利府線断層は、その形成過程において正断層から逆断層へと活動様式を変え、現在も活動の可能性のある活断層です。仙台平野の地形や地質に大きな影響を与えており、歴史地震との関連も示唆されています。今後の研究により、より詳細な活動履歴や地震発生メカニズムが解明されることが期待されます。

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