長谷川一

長谷川一氏は、1966年に愛知県名古屋市に生まれた、日本のメディア論研究者です。現在、明治学院大学文学部芸術学科において教授を務めており、その専門分野はメディア論、メディア思想、そして文化社会学といった多岐にわたる領域に及んでいます。東京大学大学院にて博士（学際情報学）の学位を取得しており、メディアが社会や文化に与える影響について深く考察しています。

長谷川氏のキャリアは、学問の世界と出版業界という、知の生産・伝達に関わる二つの側面を持っています。愛知県立旭丘高等学校を経て千葉大学を卒業後、千葉大学大学院を中退し、出版業界へと足を踏み入れました。晶文社および東京大学出版会にて編集者として勤務し、特に建築や映画といった分野の書籍編集に携わりました。この編集者としての経験は、その後の研究活動において、知の形態や伝達方法、そしてメディアの役割を考察する上で貴重な基盤となっていると考えられます。

出版業界での経験を経て、再び学術研究の道へと進みました。2002年には東京大学大学院情報学環・学際情報学府の修士課程を修了し、さらに博士課程へと進みました。2005年に単位取得満期退学となり、同年4月からは東京大学大学院情報学環の助手として研究者としてのキャリアを本格的にスタートさせました。

2006年には明治学院大学に准教授として着任し、その後、教授へと昇任しました。明治学院大学文学部芸術学科において、メディア論を中心とした教育・研究活動を行っています。また、大学における貢献は多岐にわたり、2014年度からは明治学院歴史資料館の館長も務めています（ただし、2017年度を除く）。歴史資料館での活動を通じて、大学の歴史や文化遺産の保存・公開にも積極的に関わっています。

研究者としての長谷川氏の業績は多くの著作として結実しています。特に重要な著作の一つに『出版と知のメディア論 - エディターシップの歴史と再生』（みすず書房、2003年）があります。この著作では、出版というメディアの歴史的変遷をたどりながら、現代社会における編集者（エディター）の役割とその可能性について深く論じており、その学術的な貢献が認められ、第25回日本出版学会賞奨励賞を受賞しました。

その他にも、テクノロジーの進化とメディア、そして人間社会や身体との関わりを探求する著作を多数発表しています。主な著書としては、

『アトラクションの日常 - 踊る機械と身体』（河出書房新社、2009年）
『ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか テクノロジーと身体の遊戯』（慶應義塾大学出版会、2014年）

などがあります。これらの著作を通じて、メディア技術が私たちの日常生活、身体感覚、さらには社会構造そのものに与える影響を鋭く分析しています。

また、編著としても学術書や教育関連書籍に携わっています。代表的なものとして、

『知の現在と未来:岩波書店創業百年記念シンポジウム』（岩波書店、2014年）
『大学生のためのメディアリテラシー・トレーニング』（三省堂、2015年）

などがあり、幅広いテーマで知の共有と普及に貢献しています。

長谷川一氏の研究活動は、メディアを単なる情報伝達のツールとして捉えるのではなく、それが人間、社会、文化と織りなす複雑な関係性を読み解こうとする試みです。その多角的な視点と豊富な経験は、現代メディア社会を理解するための重要な示唆を与えています。

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