長谷川嘉久

長谷川 嘉久

長谷川 嘉久（はせがわ よしひさ）氏は、1960年3月20日に京都府で生まれた、日本の元オートバイロードレーサーです。全日本ロードレース選手権の国際A級クラスにおいて、通算2勝を記録しました。1987年時点での身長は171cm、体重は62kgでした。

そのレーシングキャリアは1977年に始まりました。チーム・フライングドルフィンの一員として、ノービス250ccクラスに参戦し、これが彼のレースデビューとなりました。翌1978年には、同じノービス250ccクラスで圧倒的な速さを見せ、全7戦中3戦で優勝を飾る快進撃を演じ、見事にシリーズチャンピオンの座を獲得しました。この頃は、後に国内外で活躍する平忠彦選手（この年のランキング3位）や、樋渡治選手といった実力派ライダーたちが同じクラスでしのぎを削っており、長谷川氏も彼らとほぼ同期のライダーとして頭角を現しました。

1983年からは、ホンダが市販レーサーとして開発・販売したRS500Rを使用し、全日本500ccクラスへの挑戦を開始します。これに伴い、ホンダ系のチーム「スーパーモンキー」へ移籍しました。RS500Rは、プライベートチームの500ccクラスへの参戦を促進することを目的としたマシンでした。1984年シーズン後半に入ると、長谷川氏は着実に成績を向上させ、連続入賞を果たすなど好調を維持します。特に第10戦として開催された鈴鹿での日本グランプリでは、ヤマハワークスの平忠彦選手、河崎裕之選手に次ぐ3位でフィニッシュし、表彰台に上る活躍を見せました。この年の最終ランキングで6位に入り、「ベストプライベーター」としての評価を確立したことで、ヤマハから注目され、翌年からのヤマハ普及契約ライダーとしての契約を獲得しました。

1985年には、再び古巣であるフライングドルフィンからエントリーし、ヤマハファクトリーから前年型のYZR500の供給を受け、500ccクラスに参戦を続けます。このシーズンも、第4戦筑波大会で平忠彦選手、水谷勝選手に続く3位表彰台を獲得するなど、トップ争いに絡む活躍を見せました。また、シーズン終了後の10月6日に開催されたTBCビッグロードレースでは、最新型YZR500（OW81）を駆るチャンスを得ました。このレースは悪天候によるウェットコンディションという非常に難しい状況でしたが、世界チャンピオンのエディ・ローソン選手やクリスチャン・サロン選手が相次いで転倒する中、長谷川氏は粘り強い走りを見せました。ホンダワークスの木下恵司選手を破り、平忠彦選手に次ぐ総合2位でチェッカーフラッグを受け、そのライディングスキルを改めて証明しました。

1986年、長谷川氏はクラスを250ccへ転向します。当初はヤマハのサポートを受けるTZ250での参戦を予定していましたが、開幕前のテストでヤマハファクトリーのYZRに乗っていた奥村裕選手が負傷したため、急遽長谷川氏がヤマハファクトリーのYZR250を託されることになります。片山信二選手と共に、ホンダNSR勢に対抗し、全日本選手権のタイトル獲得を目指すという重要な任務を担うこととなりました。片山信二選手は、当時同じマシンで走る長谷川氏のライディングについて、「500ccでの経験が活きており、YZR250をまるで500ccマシンのように操っていた。特にコーナー出口でのアクセルワークの次元が非常に高かった」と、その印象を語っています。

250ccクラス開幕戦となったSUGOでは、終盤まで激しく追い上げてくるRTKホンダの喜多祥介選手を振り切り、見事に優勝を飾りました。これは長谷川氏にとって、国際A級クラスでの記念すべき初優勝でもありました。続く第2戦の鈴鹿でも、チームメイトの片山選手を抑えて連勝を飾り、さらに3戦連続でポールポジションを獲得するなど、その速さを存分に発揮し、ポイントリーダーとしてタイトル争いをリードしました。しかし、シーズン中盤以降、ホンダNSRの供給を受けて台頭してきた清水雅広選手や、着実に2勝を挙げた片山信二選手がポイント差を詰めてきました。最終戦を前にしてランキング2位に後退し、4ポイント差で迎えた最終戦の鈴鹿では、片山選手の前でフィニッシュしてポイントを再逆転し、タイトルを獲得することを目標としましたが、惜しくも最終シケインでクラッシュを喫してしまい、全日本チャンピオンの座を逃しました。この1986年シーズンは、結果的にタイトルには届かなかったものの、長谷川氏のキャリアにおいて最も充実したシーズンとなりました。

1987年も引き続きYZR250で参戦していましたが、シーズン途中の第6戦から、ヤマハが市販レーサーであるTZでポールポジションを獲得するなど健闘していた本間利彦選手にYZR250を供給することを決定しました。これにより、長谷川氏のマシンは入れ替わる形でTZ250へと変更されました。その後もフライングドルフィンから全日本250ccクラスへの参戦を続けました。

現役引退後は、京都市伏見区にてホビーショップを経営されています。また、現在も古巣であるフライングドルフィンや、カスノモータースが主催するイベントにゲストとして参加されることもあるようです。

（※ロードレース世界選手権、鈴鹿8時間耐久ロードレースへの参戦歴もあるようですが、具体的な記録はここでは割愛します。）

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