長谷川雪堤

長谷川雪堤の生涯と作品

長谷川雪堤（はせがわ せってい、1813年 - 1882年）は、江戸時代の後期から明治時代にかけて活躍した日本の絵師です。本名は後藤でありながら、金沢を由来とする姓を持ち、長谷川を画姓として用いました。名は宗一で、他にも雪江や梅紅、巌松斎、雪汀などの画号を持ち、特に名所絵や人物画にその腕を振るいました。彼は有名な絵師であり、父の長谷川雪旦から絵を学び、技術を一つずつ受け継いでいきました。

略歴

雪堤は江戸（現在の東京都）で生まれ、文政2年（1819年）という説も存在しますが、それは誤認とされています。幼少期より父・雪旦からの指導を受け、二人で模写した作品も多く残されています。雪堤は早くからその才能を発揮し、名所絵や人物画を数多く制作しました。特に、天保10年（1839年）に発行された地誌『相中留恩記略』で挿図を担当したことで、彼自身の名声も高まりました。この作品は、徳川家康のゆかりの地を中心に描かれた内容で、彼の名所絵師としての評価を確固たるものにしました。

また、尾張藩との関係においても、藩士名寄には記載されていなかったものの、同藩の同朋格として認められました。父・雪旦の死去後、画風に若干の変化が見られるようになり、徐々にその作業は精彩を欠くようになりました。1882年の3月15日に亡くなり、享年70歳でした。彼は父と同様に、東京の台東区にある妙祐山幸龍寺に埋葬されましたが、その後、寺が関東大震災で被災し、墓地は世田谷区北烏山に移転されています。

主な作品

長谷川雪堤の作品は、父・雪旦と共に作成した名所図会の挿図が多く残されていますが、肉筆画はそれほど多くはありません。彼の代表的な摺物の例には以下が含まれます。

1. 『相中留恩記略』
- 発行年：天保10年（1839年）
- 内容：相模国の名所を挿図形式で紹介する地誌。雪堤は数々の挿図を手掛け、この作品を通じて名所絵師としての地位を固めました。
- 現在、藤沢市の重要文化財として認定されています。

2. 『調布玉川惣画図』
- 発行年：弘化2年（1845年）
- 内容：玉川の水源域から河口までの風景を描いた地誌で、長谷川雪堤が挿図を担当しています。全長13メートルの巻子仕立てとなっています。

3. 『成田名所図会』
- 発行年：嘉永7年（1854年）に序、安政5年（1858年）に刊行
- 内容：名所を図会形式でまとめた全5巻の地誌で、複数の絵師による挿図が含まれています。

家族と弟子

長谷川雪堤は、父・雪旦の影響を強く受けた絵師であり、彼自身の弟子や家族にも絵師が多く見られます。弟子には唐津藩御用絵師を務めた長谷川雪塘がいるほか、娘の長谷川雪真（本名：志奈子）も絵師として活動していたことが記録されています。彼の一族は、江戸時代から明治時代にかけて続く絵師の系譜を築きました。その中で、長谷川雪堤は独自のスタイルを確立し、多くの作品を通じて当時の文化に貢献しました。

長谷川雪堤は、絵師としての同時代の文化を築く重要な存在であり、彼の作品やその後の影響は現在でも評価されています。

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