開成山公園

福島県郡山市の市役所ほど近く、市の中核をなすエリアに広がる開成山公園は、総面積およそ30.3ヘクタールにおよぶ広大な都市公園です。郡山市のランドマークとも言える存在で、古くから市民に親しまれてきました。その歴史的な価値も高く評価されており、2006年には「日本の歴史公園100選」に、また、安積開拓の礎となった五十鈴湖や、明治時代に植えられ現存するソメイヨシノとしては日本最古級とされる桜など、園内の風景は2016年度に「日本遺産」の構成文化財にも認定されています。

公園内には、郡山総合体育館が管轄する陸上競技場や野球場、弓道場、屋内水泳場といった本格的な体育施設群（開成山地区体育施設）と、公園緑地課および管理事務所が管理する広場や庭園、池などの公園施設が融合しています。特に体育施設は、福島市にあるあづま総合運動公園と並んで、県内における主要なスポーツ活動の拠点としての役割を担っています。

歴史の変遷

開成山公園の歴史は、江戸時代に二本松藩の狩り場であったことに遡ります。明治維新後、1873年（明治6年）には郡山の商人たちによる民間団体「開成社」が、この地の沼沢地を切り拓き、桑野村を開きました。この民間主導の開墾が契機となり、国による安積開拓事業と安積疏水の建設が決定されます。灌漑用水を確保するため、五十鈴湖（当時は「上の池」と呼ばれていました）と開成沼が造成されました。1878年（明治11年）には、開成社によって約4000本もの桜（ソメイヨシノやヤマザクラ）が植えられ、これが現在の美しい桜並木の起源となります。この中に含まれるソメイヨシノの一部は、現存する中でも最も古いものの一つと言われています。これらの桜は、1934年（昭和9年）に国の天然記念物に指定されましたが、その後の公園整備などに伴い1960年（昭和35年）に指定が解除されています。

明治後期には一時的に競馬場が設けられましたが、公認が得られずに短期間で廃止されました。その後、1927年（昭和2年）には別の場所に改めて開成山競馬場（後の郡山競馬場）が開設されています。

昭和に入ると開成沼の大部分が埋め立てられ、公園としての整備が進みます。1949年（昭和24年）に「郡山市都市計画運動場」として事業が決定され、1959年（昭和34年）には「都市計画公園開成山総合公園」となりました。そして、1972年（昭和47年）に正式な都市公園として開園し、現在に至ります。公園施設の拡充も進み、1990年（平成2年）には野外音楽堂が、1992年（平成4年）には安積開拓の功績を讃えるモニュメント「開拓者の群像」が建立されました。

イベントの開催も盛んに行われるようになり、1995年（平成7年）夏に始まったドイツのオクトーバーフェストを模した「サマーフェスタ IN KORIYAMA」（ビール祭）は、毎年夏の恒例行事として定着しています。近年では、2010年公開の映画「時をかける少女」のロケ地となるなど、文化的にも注目を集めました。2014年には、東日本大震災からの復興途上にあった浪江町を支援するため、近隣の郡山市が開成山公園などを会場としてB-1グランプリを開催しました。また、2021年3月27日には、震災復興を象徴する場所として、2020年東京オリンピック聖火リレーのセレブレーション会場にも選ばれています。

2023年（令和5年）7月からは、公園施設の魅力向上を目指すパークPFI（公募設置管理制度）に基づく整備事業が進められ、2024年（令和6年）4月1日にリニューアルオープンを迎えました。このリニューアルに伴い、新たに指定管理者が導入され、園内にはカフェやガーデニング雑貨店など、9店舗からなる商業エリアが誕生し、公園の利用スタイルがさらに多様化しています。

公園内の主な施設と見どころ

公園は大きく分けて体育施設エリアと公園施設エリアに分かれています。

体育施設
前述の通り、陸上競技場、野球場、弓道場、屋内水泳場があり、郡山地域のスポーツ振興に重要な役割を果たしています。

公園施設
西側のエリアは、園の中心にある五十鈴湖を中心に整備されており、市民の憩いの場となっています。色とりどりのバラが咲き誇るバラ園や、子供たちが遊べる広場には様々な遊具が設置されています。特に春の桜の時期には夜桜のライトアップが行われる桜まつりや、夏のサマーフェスタなど、年間を通して様々なイベントが開催され賑わいます。公園の南側にはせせらぎこみちが設けられ、のどかな散策を楽しめます。その起点となる南東側には、多目的に利用できる文化施設「ミューカルがくと館」が立地しています。

園内の主要なスポットには以下のようなものがあります。

五十鈴湖（いすずこ）
江戸時代に灌漑用水として造られた「上の池」を前身とする広大な池です。池上には野外音楽堂や八角堂（あずまや）が浮かび、太鼓橋も架かっています。その名前は、隣接する開成山大神宮の手前を流れることから、伊勢神宮内宮の五十鈴川にちなんで名付けられました。

開拓者の群像（かいたくしゃのぐんぞう）
1992年に建立された、安積開拓の偉業を称えるモニュメントです。彫刻家・三坂耿一郎氏の作品で、高さ17.6メートルにおよぶ塔の上には郡山市の鳥であるカッコウの像が、塔の下には安積開拓に尽力した中條政恒、大久保利通、ファン・ドールンといった人々の像が配置されています。モニュメントの中央には、安積疏水をイメージした水路が流れています。

記念碑等
園内には、作家・久米正雄（三汀）の句碑や、小説『貧しき人々の群』の一節が刻まれた宮本百合子の文学碑など、ゆかりのある文人たちの記念碑も設置されています。

バラ園
6月と10月の見頃の時期には、約400種、およそ800本の美しいバラが来園者の目を楽しませます。

* 国鉄D51形蒸気機関車
1940年（昭和15年）に現在のJR東日本郡山総合車両センターで製造され、実際に運行されていた車両が1970年に移設・保存されています。通常は柵に囲まれていますが、こどもまつりの開催時には特別に内部が一般公開されます。

その他、耐震貯水槽なども設置されています。

開成山公園の南側には、規模は小さいながらも開成二丁目公園と水・緑公園といった街区公園が隣接しており、公園エリア全体として市民の憩いの場を提供しています。

公園の周辺には、郡山市役所や郡山総合体育館の他、こおりやま文学の森資料館、開成山大神宮、郡山女子大学、郡山市開成館、安積疏水土地改良区事務所など、公共施設や教育機関、文化施設が集積しています。また、地元の銘菓店である三万石や柏屋の店舗も近くにあり、土産物を購入することも可能です。日帰り入浴施設であるスーパー銭湯遊湯ランドも徒歩圏内です。

交通アクセスとしては、JR郡山駅西口バス乗り場から市役所経由のバスに乗車し、「郡山市役所」停留所で下車するのが便利です。また、JR郡山駅からさくら通りを経由して、車で約15分ほどで到着します。安積開拓の歴史が息づくこの公園は、スポーツ、文化、憩いといった多様な要素を併せ持ち、郡山市の発展を見守り続けるシンボルです。

（参照文献：今野辰哉・藤田龍之・知野泰明（2002）「福島県内の水辺を持つ歴史的公園に関する研究―白河市南湖公園を中心として―」土木史研究（土木学会）22:133-142、郡山市公式サイト等）

もう一度検索