開発教育

開発教育について

開発教育（かいはつきょういく）とは、南北問題や国際協力の理解を深めるために始まった教育活動であり、現在では自己と地域、さらに世界との関わりを認識し、共生できる公正な地球社会の実現に参加するための教育・学習活動として広がっています。これは、学校教育や社会教育、市民活動の中で実践されています。

定義

日本において開発教育を推進する開発教育協会（DEAR）は、1997年にこの教育の目的を以下のように定義しています。開発教育は、開発に関する課題や理解を深め、共生できる公正な地球社会の構築を目指す教育活動です。その具体的な目標は以下の5つです。

1. 人間の尊厳性を尊重し、文化の多様性を理解すること
2. 貧困や格差の現状とその原因を理解すること
3. 開発問題と環境破壊などの地球的課題との関連を知ること
4. 開発問題と自分たちの関わりを理解すること
5. これらの問題を克服するための能力と態度を育むこと

歴史的背景

開発教育は1960年代に、南北問題が顕在化すると同時に欧米の国際協力NGOから提唱されました。当初は第三世界の現状を知らせるための活動が主でしたが、1970年に国連総会が「第2次国連開発の10年計画」を採択することにより、各国は国民への理解を深めるべく努力することが求められました。これにより、開発教育は体系的に発展することが期待されるようになりました。

日本では、1970年代末から開発教育が注目され、1982年には開発教育協会が設立され、定期的に全国研究集会、シンポジウムが行われ、地域レベルでの教育活動が広まりました。教育課程においては、1989年の学習指導要領の改訂を契機に、国際理解教育や環境教育が強調されるようになり、さらに2002年度には全公立学校において「総合的な学習の時間」が導入されました。これにより、開発教育の実践は学校教育の中で一般化していきました。

内容と方法

開発教育のカリキュラムは、特に12のテーマに基づいて構成されています。これには、子ども、文化、食、環境、貿易、貧困、識字、難民、国際協力、ジェンダー、在住外国人、まちづくりが含まれています。これらのテーマを扱う際には、以下のアプローチが取られます。

• - 文化理解アプローチ：人間の尊厳性や文化の多様性を理解するための基本的なアプローチです。
• - 課題分析アプローチ：貧困や格差の現状を知り、その原因を深く探る手法です。
• - 関係理解アプローチ：自分たちの身の回りの事象と開発問題との関連を理解するアプローチです。
• - 課題解決アプローチ：具体的な課題をどのように解決していくかを考える過程にフォーカスします。

開発教育では、内容と同様に教育方法にも重点が置かれており、参加型学習やワークショップが積極的に取り入れられています。この手法には、ロールプレイやディベート、シミュレーションなどが含まれ、エンゲージメントを通じて学びを深めることを目指しています。

教材事例

開発教育で使用される代表的な教材には、以下のようなものがあります：

• - 『パーム油のはなし－「地球にやさしい」ってなんだろう？』
• - 『参加型学習で世界を感じる－開発教育実践ハンドブック』
• - 『世界がもし100人の村だったら－ワークショップ版』
• - 『コーヒーカップの向こう側－貿易が貧困をつくる？！』

これらの教材は、開発教育の理念や実践を広めるための重要なツールとして活用されています。開発教育は、地球社会の多様な問題を理解し、未来のための持続可能な解決策を考える力を育むための重要な枠組みとして発展し続けています。

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