閼伽井庵

閼伽井庵（あかいあん）

閼伽井庵は、奈良市高畑町にある浄土宗鎮西派の寺院です。地元では閼伽井坊（あかんぼう）とも呼ばれ、かつて寺の周辺は閼伽井町という地名でした。現在は高畑町の一部となっています。

歴史

寺の正確な創建時期は不明ですが、新薬師寺や赤穂神社との関係が深く、興味深い伝承が残っています。聖武天皇が眼病を患った際、新薬師寺に祈願したところ、赤穂の神に祈り、閼伽井の水を使うべしとの神託があったと伝えられています。また、近隣には吉備塚があり、この地で吉備真備の末裔が陰陽師として活躍していたという伝承も存在します。

寺には口伝で、七ツ玉のソロバンを使った占いである算易が伝えられています。本尊の木像や銅造の鎮宅霊符神（現在は天之御中主神）が祀られており、易を中心とした閼伽井庵の古い信仰を垣間見ることができます。

江戸時代中期には一時廃絶していた時期があったようですが、その後草庵が営まれ、安政の地震後に再建され、現在に至ります。

伽藍

玄関を上がると次の間が本堂と礼拝の間になっており、奥には書院が続いています。庭の南方には奈良教育大学のキャンパスがあり、その中に吉備塚を見ることができます。庫裏の一角には格子窓の下に閼伽井があり、現在も清水が湧き出ています。

本堂の須弥壇中央には、本尊である阿弥陀如来坐像と両脇侍が祀られています。右脇壇には阿弥陀如来立像と浄土宗の祖である善導大師と円光大師が祀られ、左脇壇には厨子の中に木像鎮宅神像と銅造鎮宅霊符神が安置されています。その他、内仏として不動明王や弘法大師像も祀られています。

現在の建物は1960年（昭和35年）に新築されたものですが、その前身は明治中期に建築されたもので、さらにその前の建物は安政地震で倒壊したと伝えられています。

参考文献

奈良市史編集審議会編『奈良市史 社寺編』、吉川弘文館、1985、p.121
『日本歴史地名大系. 第30巻 (奈良県の地名)』 （平凡社 1981年） p.521

関連項目

* 日本の寺院一覧

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