阮福暘

阮福暘（グエン・フック・ズオン、Nguyễn Phúc Dương）は、生年不詳ながら、18世紀後半のベトナム広南国において、その短い生涯を激動の中で生きた人物です。

生い立ちと即位

阮福暘は、阮福昊の子として生まれました。1775年、広南国の政情が不安定な中、叔父である阮福淳から王位を譲り受け、自ら新政王（あるいは親政王）と称しました。この時、阮福淳は太上王として遇されました。しかし、彼の治世は、国内の混乱と外からの脅威に晒されることとなります。

西山朝の侵攻と敗北

1777年7月、ベトナム中部で台頭した西山朝の軍隊が、広南国に侵攻を開始します。阮福暘は、重臣の宋福和に軍を率いさせ、西山党と交戦させました。一時的に勝利を収めるものの、8月には西山朝の阮文恵が自ら軍を率いて香堆を攻撃してきました。阮福暘と阮福淳は、大臣たちと協議し、平順への逃亡を余儀なくされます。

しかし、広南国の将軍たちは、この事態に恐れをなし、次々と逃亡してしまいました。阮福暘と阮福淳は、宋福和を含むわずか18人の大臣とともに、西山軍の捕虜となり、無残にも殺害されることとなります。広南国は、事実上崩壊し、阮福暘の治世は、悲劇的な結末を迎えました。

死後の名誉回復

1803年、阮福暘の従兄弟にあたる阮福映（後の嘉隆帝）が、西山朝を滅ぼし、ベトナムを統一して阮朝を建国します。阮福映は、阮福暘の死を悼み、彼に「恭敏英断玄黙偉文穆王（Cung Mẫn Anh Đoán Huyền Mặc Vĩ Văn Mục Vương）」という諡号を贈りました。これにより、阮福暘の悲劇的な生涯は、歴史の中で名誉回復を果たし、後世に伝えられることとなりました。

阮福暘は、激動の時代に翻弄され、短い生涯を終えましたが、彼の存在は、ベトナムの歴史における重要な転換期を象徴しています。西山朝の侵攻という未曾有の危機に立ち向かい、最終的には敗北したものの、その後の阮朝の成立に繋がる、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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