阮福淳

阮福淳（グエン・フック・トゥアン、Nguyễn Phúc Thuần）は、1754年に生まれ、1777年に没したベトナム広南国の国王です。廟号は睿宗（Duệ Tông）、諡号は聡明寛厚英明恵和孝定皇帝（Thông Minh Khoan Hậu Anh Mẫn Huệ Hòa Hiếu Định Hoàng Đế）と贈られています。初名は阮福昕（グエン・フック・ハン、Nguyễn Phúc Hân）といい、武王阮福濶（グエン・フック・コエット）の十六男として生まれました。

1765年、阮福淳は国王に即位し、定王と称しました。しかし、実権は摂政の張福巒（チュオン・フック・ロアン）が握っており、阮福淳は事実上の傀儡に過ぎませんでした。張福巒の苛酷な政治は民衆の不満を募らせ、ついに1771年には、タイソン（西山）で阮文岳（グエン・ヴァン・ニャック）、阮文恵（グエン・ヴァン・フエ）、阮文侶（グエン・ヴァン・ルー）の三兄弟による大規模な反乱、いわゆる西山党の蜂起を引き起こすことになります。

広南国は内乱状態に陥り、混乱が続く中、1774年には黎朝（レ朝）がこの機に乗じて大挙南下し、広南阮氏の首都であった富春（フー・スアン、現在のフエ）を攻略しました。これにより、広南国はさらに窮地に立たされます。1775年、阮福淳は甥の阮福暘（グエン・フック・ズオン）に王位を譲り、自身は太上王と称して政治の表舞台から退くことになります。

しかし、平和は長くは続きませんでした。1777年8月、西山党の阮文恵が香堆（フオン・デ）を攻撃すると、阮福淳と阮福暘は、宋福和（トン・フック・ホア）ら18人の大臣とともに殺害されるという悲劇に見舞われました。阮福淳の短い生涯は、広南国の混乱と激動の時代を象徴するものでした。

その後、1803年になり、阮福淳の甥である阮福映（グエン・フック・アイン）が阮朝を建国すると、阮福淳に対して睿宗の廟号と聡明寛厚英明恵和孝定皇帝の諡号が追贈されました。これにより、阮福淳は死後、名誉を回復し、その功績が再評価されることになったのです。阮福淳の生涯は、激動の時代に翻弄された悲劇の君主として記憶されるとともに、その後の阮朝の成立へと繋がる重要な歴史的転換期を彩る人物として、後世に語り継がれています。

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