阿史那泥孰匐

阿史那泥孰匐（あしな ないじゅくぶく）は、7世紀後半の唐代に、東突厥の可汗として短期間その地位にあった人物です。彼の生涯は、当時の唐朝と突厥の関係、そして中央アジアの政治情勢を色濃く反映しています。

生涯

阿史那泥孰匐は、調露元年（679年）に歴史の表舞台に登場します。当時、唐朝は羈縻（きび）政策という間接統治政策を周辺民族に対して行っており、東突厥もその対象でした。しかし、この政策に対する不満が鬱積し、単于都護府に属する突厥の有力部族である阿史徳温傅（あしとくおんぷ）と阿史徳奉職（あしとくほうしょく）が反乱を起こしました。

反乱軍は阿史那泥孰匐を担ぎ上げ、可汗として擁立しました。この動きに呼応して、単于都護府の管轄下にあった24州もの地域が唐朝に対して反旗を翻し、事態は深刻化しました。

唐の高宗は、この反乱を鎮圧するために鴻臚卿の蕭嗣業（しょうしぎょう）らを派遣しましたが、阿史徳温傅に敗北を喫し、多くの兵士が命を落としました。事態を重く見た高宗は、礼部尚書の裴行倹（はいこうけん）を定襄道行軍大総管に任命し、李思文（りしぶん）や周道務（しゅうどうむ）らを含む大軍を派遣して討伐に当たらせました。

裴行倹率いる唐軍は、調露2年（680年）に黒山（大青山）において突厥軍を打ち破り、阿史徳奉職を捕らえることに成功しました。しかし、その直後、阿史那泥孰匐は部下の裏切りによって殺害され、短期間の可汗としての生涯を終えました。

阿史那泥孰匐の生涯は、唐朝の羈縻政策に対する周辺民族の反発、そしてそれに対する唐朝の軍事力による鎮圧という、当時の政治情勢を象徴する出来事であったと言えるでしょう。彼の死後も、東突厥を巡る情勢は複雑に推移し、唐朝との間で様々な駆け引きが繰り広げられることになります。

参考資料

『旧唐書』
『新唐書』

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