阿多カルデラ

阿多カルデラ：複雑な地質史と活火山としての現在

鹿児島湾の南端に広がる阿多カルデラは、その複雑な成り立ちと歴史から、火山学者や地質学者の間で長年研究が続けられている重要な地域です。姶良カルデラと鬼界カルデラの間に位置し、薩摩半島南部から大隅半島南部にかけて広く分布する阿多テフラの起源として注目されています。

カルデラの形成と進化

初期の研究では、阿多カルデラは指宿カルデラと肝属カルデラが複合したものであると考えられていました。しかし、1980[[年代]]以降の調査により、阿多テフラの噴出源は、従来考えられていたカルデラ領域から約20km北に位置する別のカルデラであることが明らかになりました。現在では、この北側のカルデラを阿多北部カルデラ、南側のカルデラを阿多南部カルデラと呼んで区別しています。

阿多北部カルデラは約11万年前、巨大な噴火を起こし、大量の阿多テフラを噴出しました。この大噴火は、火砕流を伴う噴火とカルデラの陥没を繰り返す過程で発生したと考えられています。興味深いことに、阿多テフラ噴出直後には、阿多南部カルデラでも陥没が発生したと推定されています。

この大噴火の後、阿多南部カルデラの内部には、鷲尾岳や清見岳などからなる新期指宿火山群が形成されました。さらに約5500年前には、阿多南部カルデラ西北縁部で大きな噴火が起こり、現在の池田湖（池田カルデラ）が誕生しました。この噴火とほぼ同時に発生したマグマ水蒸気爆発によって、山川湾、成川盆地、鰻池、池底、松ヶ窪などの噴火口群が形成されたと考えられています。その後も火山活動は続き、鍋島岳や開聞岳などが形成され、現在の地形が作られてきました。

主要な噴出物と年代

阿多カルデラの噴火活動は、多様な噴出物を生み出しました。年代が特定されていない古期指宿火山群（矢筈岳、小浜岳、高江山など）や中期指宿火山群（大野岳、魚見岳など）の存在も確認されています。

約24万年前には阿多鳥浜火砕流が、約10.5万年前には大規模な阿多テフラの噴出がありました。阿多テフラは、前半ステージのマグマ水蒸気噴火とマグマ噴火の繰り返し、後半ステージのカルデラ噴火という二段階の噴火活動で形成されたとされています。阿多テフラの総体積は、約300km³にも及びます。

約10～1.9万年前には新期指宿火山群が形成され、約5500年前には池田湖テフラを噴出する噴火が起こりました。さらに、約4500年前には鍋島岳、約4000～1000年前には開聞岳が形成されました。

活火山としての阿多カルデラ

阿多南部カルデラ内部にある池田湖から山川湾にかけてのカルデラと噴火口群は、「池田・山川」として、ランクCの活火山に指定されています。また、カルデラの西縁には、同じくランクCの活火山である開聞岳が存在します。指宿市は阿多南部カルデラの西側に位置し、有名な指宿温泉もこのカルデラの影響下にあります。

阿多カルデラの研究は、日本の火山活動の歴史を理解する上で非常に重要です。今後も継続的な研究と観測を通して、その活動のメカニズムや将来の予測精度を高めることが求められています。

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