阿知波城

阿知波城（あちわじょう）は、別名、雨山城（あめやまじょう）とも呼ばれ、雨山村古屋敷（あめやまむらふるやしき）や雨山砦（あめやまとりで）とも称されます。この城は、かつての三河国雨山、現在の愛知県岡崎市雨山町東アチワ（旧額田郡額田町）に位置していました。阿知波氏は、後に雨山奥平家として知られる一族の居館であり、「雨山砦跡及び雨山合戦地」として岡崎市の指定史跡となっています。

阿知波城の概要

阿知波城は、矢作川水系乙川の最上流部にある支流、雨山川の渓谷の奥深くに位置しています。この地域では、村落規模の国人領主たちの城館跡として「古屋敷」という伝承地や地名が残っており、阿知波城もその一つとして、阿知波氏に始まる雨山奥平氏の居館と見なされています。しかし、東アチワ地区内での正確な遺構の位置は特定されていません。ただし、館跡と思われる削平地や、中世の宝篋印塔などが地域内の各所に見られると言われています。

築城時期については、『額田町史』では1543年（天文12年）以前とされています。一方、『愛知県中世城館跡調査報告Ⅲ（東三河地区）』では、存続期間を1506年（永正3年）から1590年（天正18年）としています。初代城主は尾張国知多から雨山に移ったとされる阿知波定基であり、元亀年間（1570年-1573年）より奥平氏（雨山奥平氏）を名乗ったと伝えられています。

雨山合戦

阿知波城は、三河の国人領主たちが今川氏に対して起こした反乱、三河忩劇における戦闘の一つである1556年（弘治2年）の雨山合戦の舞台となりました。この合戦では、奥平貞勝・貞能親子に呼応した阿知波定直・阿知波定助・奥平貞良らが城に籠もり、今川方の菅沼定村らを迎え撃ちました。阿知波城の別称である雨山砦は、この雨山合戦の際に築かれた防御施設を指すとする見解があります。

雨山砦跡と古戦場は、1992年（平成4年）6月15日付けで岡崎市の史跡に指定され、その歴史を今に伝えています。

参考文献

平井聖ほか 1979「雨山砦」『日本城郭大系』第9巻（静岡・愛知・岐阜）新人物往来社 p.320
額田町教育委員会 1986年11月1日「中世城址一覧」『額田町史』p.146
黒屋直房 1987『中津藩史』国書刊行会
文化財図書普及会編 1997『愛知県中世城館跡調査報告Ⅲ（東三河地区）』 （愛知県教育委員会編 2001『都道府県別・日本の中世城館調査報告書集成』第10巻〈中部地方の中世城館4-愛知-〉所収）
「額田の諸城」pp.194-197
「雨山城」 p.237
新編岡崎市史額田資料編編集委員会 2010年3月31日「雨山村古屋敷」『新編岡崎市史 額田資料編 Ⅰ』p.300
新編岡崎市史額田資料編編集委員会 2011年3月31日「戦国織豊時代」『新編岡崎市史 額田資料編 Ⅱ』pp.154-157

関連項目

三河忩劇
日本の城一覧
* 雨山奥平家

もう一度検索