阿部余四男

阿部余四男（あべ よしお）

阿部余四男（1891年1月3日 - 1960年4月22日）は、日本の動物学者であり、広島大学名誉教授を務めた人物です。彼の研究は、哺乳類、特にニホンオオカミやノウサギの分野で大きな貢献を果たしました。

生涯

阿部は山形県飽海郡上郷村（現在の酒田市）で、教師の父と医師の娘である母の四男として生まれました。旧制山形中学校、第二高等学校を経て東京帝国大学理科大学に進学し、渡瀬庄三郎教授のもとで動物学を学びました。1916年に同大学を卒業後、ヨーロッパ留学を経て、第二高等学校や広島高等師範学校で教鞭を執りました。1929年には広島文理科大学（現在の広島大学）教授に就任し、新制広島大学発足後は向島臨海実験所所長などを歴任しました。また、初代広島ペンクラブ会長も務めました。

阿部は渡瀬庄三郎の高弟の一人であり、1918年に渡瀬が食用蛙を日本に輸入し、東大伝染病研究所の池で飼育した際には、山田信一郎、河野卯三郎とともにその世話を担当しました。彼の研究は、ノウサギの毛色変化やニホンオオカミに関するものが特に知られていますが、「動物学講義」などの著作も残しており、当時の多くの動物学徒を啓発しました。中国大陸や日本列島産の哺乳動物相全般に対する幅広い見識は、彼の後半生における地理的分布論に反映されています。

哺乳類学者として知られる阿部ですが、彼が指導した学生の研究材料は節足動物や軟体動物など、幅広い分類群にわたっていました。分類学にも深い興味を持ち、ウサギ、イノシシ、オオカミ、アマミトゲネズミに関する報告がありますが、分類学者ではありませんでした。広島文理大教授時代に指導した佐藤井岐雄により、彼の発見・命名した新種のサンショウウオの名前に献名されました（アベサンショウウオ Hynobius abei Sato, 1934）。

1960年4月22日に逝去、享年69歳でした。

業績

阿部余四男の業績は多岐にわたりますが、特に以下の点が挙げられます。

哺乳類研究: ニホンオオカミやノウサギに関する研究は、当時の哺乳類学において重要な貢献となりました。
動物地理学: 中国大陸や日本列島の哺乳動物相に関する研究は、動物の地理的分布を理解する上で重要な情報を提供しました。
教育活動: 多くの学生を指導し、日本の動物学の発展に貢献しました。

家族・親族

阿部家は学者の家系であり、哲学者・美学者の阿部次郎、陸軍軍人・実業家の堀三也は兄、歴史学者の竹岡勝也は弟にあたります。また、動物生態学者の阿部襄は甥にあたります。

献名された種

Hynobius abei Sato, 1934（アベサンショウウオ）
Myotis abei Yoshikura, 1944

主な門下生

佐藤井岐雄
川村智治郎
青田重忠
鈴木正将
倉茂好雄
大塚外次
吉倉真
稲葉明彦
皆森寿美夫
森川国康

著作

「動物学講義」阿部余四男 著

阿部余四男は、日本の動物学の発展に大きく貢献した人物であり、その業績は今日でも高く評価されています。

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