阿部十郎

阿部 十郎（あべ じゅうろう）

阿部十郎（あべ じゅうろう）は、天保8年（1837年9月21日）に出羽国由利郡羽広村で誕生し、明治40年（1907年）に亡くなるまで、幕末から明治にかけての激動の時代を生きた幕末の志士です。彼は新選組隊士、御陵衛士、赤報隊隊士として活躍し、その名を歴史に刻みました。

生い立ち

阿部十郎は農家の次男として生まれましたが、のちに亀田藩士・高野林太郎の養子となり、武士としての道を歩み始めます。文久3年（1863年）には新選組に加盟し、阿部槙蔵の名で知られていましたが、新選組の方針に反して脱藩し、逃亡生活を余儀なくされます。この頃、彼は水戸藩士の吉成勇太郎にかくまわれ、名の知れた薩摩藩士・中村半次郎とも知り合いました。

その後、「高野十郎」と名乗り、大坂で剣術を学びました。彼の剣技は高く評価され、大坂ぜんざい屋事件での活躍もあり、再び名を挙げています。

御陵衛士としての活動

新選組時代、阿部は伍長や砲術師範を務めましたが、慶応3年（1867年）に伊東甲子太郎らと共に御陵衛士を結成し、新たな道を歩みます。彼は油小路事件の際、運良く難を逃れ、のちに薩摩藩邸に逃げ込みました。

彼は復讐の機会を伺い、御陵衛士の仲間と共に近藤勇を襲撃し、負傷させる事件に関与。また、戊辰戦争では薩摩藩の中村半次郎に属し、重要な戦闘に参加しました。後に赤報隊にも加わり、指揮のもとで江戸を目指しました。

明治維新後の転職

明治維新後、彼は国家に仕官し、弾正台や開拓使、北海道庁などでの仕事を経て、札幌で果樹園を経営することになります。果樹の栽培に注力し、特にリンゴに力を入れました。明治30年代には史談会に参加し、自身の経験を元に当時の貴重な情報を後世に伝えています。

私生活と逸話

彼の生涯には数多くの逸話が残っており、特に近藤勇の襲撃に関わる証言が有名です。彼は史談会において、近藤襲撃の際に槍で仕留める役目を担った仲間が恐れを成して逃げてしまったために失敗したとの見解を示しました。また、斎藤一に関する噂を信じ込み続けていたことも彼の人となりを示しています。

生涯を通じて、近藤や沖田総司などの同時代の志士たちに対する彼の見解は、近年まで語り継がれています。特に「沖田は勇の一番弟子」と称した言葉は、彼の中での武士道の意義を強く示していると言えます。

死去

阿部十郎は明治40年に東京で亡くなり、享年71歳でした。彼の波乱万丈の人生は、幕末から明治時代への移行を象徴するものとして、後世に語り継がれています。

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